日本のサービス輸出の特徴と課題

2015/09/24 中田 一良
調査レポート
国内マクロ経済

○日本のサービス輸出は長期的にみると拡大傾向にあり、円安の影響もあって、2014年のサービス輸出は17.3兆円となった。内訳をみると、輸送、その他業務サービス、知的財産権等使用料などが中心となっている。

○世界のサービス輸出は、近年は財輸出の伸びが低いということもあるが、財輸出の伸びを上回って拡大している。輸出国・地域の中心はEUと米国であり、財輸出と比較すると、世界のサービス輸出では先進国のシェアが高いといった特徴がみられる。項目別では、旅行やその他業務サービスを中心に増加傾向にあり、旅行の増加の要因の一つには、アジア太平洋地域の新興国・途上国での需要の増加があげられる。

○日本のサービス輸出の世界に占めるシェアは、長期的にみると低下傾向にある。日本のサービス輸出のうち世界の輸出額に占めるシェアが高い項目は、知的財産権等使用料、建設、輸送である。知的財産権等使用料は自動車製造業の海外現地生産の拡大を反映したもの、輸送は日本の財輸出の競争力と関係があると考えることができる。つまり、日本のサービス輸出のうち世界に占めるシェアが高く、競争力を持っているものは、広い意味でものづくりに関連するものであると言える。また、日本、EU、米国のサービス輸出の項目別の構成比を比較すると、日本は、上述のものづくりに関連していると考えられる項目のシェアが高いという特徴がある。

○今後、日本がサービス輸出を増加させるためには、競争力を持つと考えられる、知的財産権等使用料などのものづくり関連サービスの輸出をさらに拡大していくことが必要である。それと同時に、ものづくりとは関連がないサービス分野において、輸出を増加させることも重要である。サービス輸出は、財と比較すると質やオリジナリティがより重視される傾向が強く、サービスの質に見合う価格で提供することが可能であり、海外との価格競争に巻き込まれる可能性は小さいと考えられる。日本は、旅行をはじめとして、独自の強みをいかしてサービス輸出の増加につなげる努力が必要である。

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