今月のグラフ(2022年5月)タイトな需給を反映して原油相場は高止まり

2022/05/06 芥田 知至
今月のグラフ
海外マクロ経済
商品市況

2021年末頃の原油市場では、新型コロナウイルスのオミクロン株への警戒感の後退、世界景気回復を受けた石油需要増加、石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC産油国で構成する「OPECプラス」の増産加速に慎重な姿勢などが相場押し上げ材料になっていた。1月に入ると、ウクライナや中東での地政学リスクへの懸念も加わり、ロシアのウクライナ侵攻前から原油相場は上昇傾向にあった。

そこに、2月24日、ロシアがウクライナへの本格的な軍事侵攻を開始した。先進7カ国(G7)は緊急首脳会議でロシアに経済・金融制裁を科すと表明した。もっとも、25日には、米政権が対露制裁について、エネルギー市場に打撃を及ぼす意図はないと説明したことや、ロシアがウクライナとの協議に向けて前向き姿勢を示したことが原油の上値を抑えた。

しかし、その後、相場上昇は加速した。西側諸国によるロシアへの金融制裁の強化等がエネルギー取引を制約するとの懸念や、欧米石油メジャーによるロシア事業からの撤退発表、日米欧など国際エネルギー機関(IEA)加盟国による6000万バレルの備蓄放出の合意が量的に不十分と評価されたことなどが相場を押し上げた。3月7日には、前日にブリンケン米国務長官が「欧州諸国とロシア産原油輸入を禁止する可能性」を表明したことや、ロシアがイラン核合意再建交渉に際して、米国の対ロシア制裁がロシアとイランの貿易に影響しないとの保証を要求したことが需給引き締まり観測につながり、一時WTIは130.50ドル、ブレントは139.13ドルとともに2008年7月以来の高値まで上昇した。

その後、9日には、アラブ首長国連邦(UAE)の駐米大使が原油増産への支持を表明したことを受けて、WTIが12.1%安、ブレントが13.2%安と急落した。ロシアとウクライナの双方が停戦協議に進展があるとして停戦期待が高まったり、イラン核合意再建期待が再び浮上して相場が下落する場面もあった。足元では、中国での新型コロナウイルス感染拡大を受けたロックダウン(都市封鎖)が長引いて、石油需要の減退が懸念されている。米国で金融引き締めが継続されると見込まれることも弱材料であり、これまでドル高が進んできたこともドル建てで取引される原油価格の抑制要因になっている。

それでも、原油相場は、WTIで90ドル台前半、ブレントで90ドル台後半をボトムに高止まりが続いている。上記の弱材料にも関わらず、原油相場を押し上げる材料がある。すなわち、ウクライナとロシアとの停戦協議への期待が後退していること、西側諸国による対ロシア制裁の強化やロシア産商品を敬遠する動きを背景に今後さらにロシアからの石油供給が落ち込むとみられていること、リビアでの供給障害などが原油相場を押し上げている。5月4日に欧州連合(EU)がロシア産石油の禁輸措置を表明した後、5日に行われたOPECプラスの閣僚級会合で6月の増産幅が日量43.2万バレルに据え置かれたことも、需給引き締まり観測につながった。実際、米国の原油在庫は、今年に入ってから、例年の同時期に比べて低水準にとどまっており、タイトな原油需給が反映されている。

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