PFI事業における財政負担軽減・サービス水準向上等に係る分析

2018/09/10 馬場 康郎
自治体経営
PPP
PFI
官民協働

わが国では過去10数年にわたり、多数のPFI事業が実施されてきました。また、国・地方ともに厳しい財政状況にあることから、現在、PFI手法の更なる活用が進められています。PFI手法の活用を進めるにあたり、過去のPFI事業の経験を踏まえ、PFI手法の持つ可能性を十分に引き出すための取組みが重要であると考えられます。
そこで、2007年度以降に入札公告がなされた354事業を対象として、財政負担の軽減(VFM)、サービス水準の向上に係る定量分析を行いました。また、財政負担の軽減・サービス水準の向上の双方にプラスの影響を与える競争性の確保(入札参加者数の増加)、地元企業の受注機会に関する取組みについても分析しました。

調査結果概要

財政負担の軽減

  • 民間事業者の裁量を増やすことが重要であり、PFI事業に独立採算事業を含めることが有意にプラスの影響を与える。一方、独立採算事業を含まない指定管理者として事業者を指定することは、財政負担の軽減に有意な結果をもたらさない。
  • 入札参加者数の増加が財政負担の軽減に有意にプラスの影響を与えている。また、十分な提案期間の確保、予定価格の公表による情報の非対称性が財政負担の軽減に有意にプラスの影響を与えている。一方、競争的対話の実施については、財政負担の軽減への影響は有意ではない。
  • 事業者選定にあたっての評価基準で、価格のウエイトを高くすることが財政負担の軽減に有意にプラスの影響を与える。

サービス水準の向上

  • 入札参加者数の増加がサービス水準に有意にプラスの影響を与えている。競争的対話の実施については、サービス水準の向上への影響も有意ではない。
  • 事業者選定にあたっての評価基準で、価格のウエイトを高くすることはサービス水準に有意にマイナスの影響を与えうる。

入札参加者数

  • 予定価格の公表等による情報の非対称性の解消は、入札参加者数に有意にプラスの影響を与える。
  • 地元要件を課すことは、入札参加者数は有意にマイナスの影響を与える。

地元企業の受注機会

  • 事業規模の縮小や事業期間の短縮等の事業条件についての配慮が地元企業の受注機会の増加に与える影響は有意ではない。また、地域におけるPFI事業の実施経験が与える影響は有意ではない。
  • 地元要件を課すことは、地元企業への発注機会に有意にプラスの影響を与える。一方、入札における事業者審査において「地域経済の活性化への配慮」を項目に加えることによる影響は有意ではない。

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