縮小する雇用状況下での新たな外国人労働者の受入れ~諸外国の事例を通して考える「特定技能」のこれから~

2020/10/06 加藤 真
雇用・労働政策
外国人
雇用

本稿は、雇用環境が悪化するなかで、国内労働者の雇用機会や雇用条件を守りながら、いかに新たな外国人労働者(特に低~中熟練)を受け入れていくか、その受入れ方法についてヒントを得るため、東アジアを中心とする諸外国の制度を参照しつつ、日本への導入可能性を検討した。

【要旨】

■雇用状況の変化について

● 新型コロナウイルスの影響に伴い、雇用主・企業側も労働者側も雇用状況や景気認識は大きく悪化している。

● 特に、外出自粛・営業自粛による飲食・宿泊サービス分野への影響や、在宅勤務推奨によるビルクリーニング分野等への影響は甚大であるが、当該分野は、特定技能外国人の受入れ対象分野でもある。

● コロナ禍の収束がみえず、雇用状況の改善もすぐには期待できない今般の状況は、国内の雇用を守ることを優先しつつ、どのように新たな外国人労働者を受け入れていくか、その制度や方法を検討する好機だといえる

■外国人労働者受入れ調整のための諸外国の制度と日本への導入可能性の検討

● 日本の技能実習・特定技能制度は、「労働市場の影響を判定する制度を持っていないのが現状」と評されることを受け、主に韓国・台湾で行われている3つの制度・実態を整理した上で、日本への導入可能性を検討した。

●(1)労働市場テストは、特定技能の基本方針でうたう「国内人材確保のための取組を行った上で、なお、人材の確保が困難な状況に限って受け入れる」ということを具現化する制度であり、導入に向けて検討の価値はあるが、韓国の事例からは、最低賃金程度での求人では国内労働者からの求職行動はあまり期待できず、制度が形骸化する懸念も示されており、厳格な制度運営が求められる。

●(2)受入れ人数・規模の設定に関わり、景気動向等をみながら毎年検討し、さらに随時雇用状況をみながら「+α」としてバッファをもたせる韓国の制度運用は、「2019年から2023年まで5年間で計34.5万人の受入れ」として、景気動向への柔軟な対応が限定的な特定技能制度にも参考になる点だと思われる。また、台湾のように「警戒指標」として、政府はどの指標群をモニタリングし、政策判断に用いるのかを明示することが重要である。

●(3)雇用負担金は、国内労働者と外国人労働者の間にある賃金差を埋め、国内労働者の雇用機会の削減や雇用条件の低下を防ぐことを目的とする制度であるが、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」にて2020年3月末に初めて公表されたデータに基づけば、国内労働者(受入れ国側の国籍を有する労働者)と外国人労働者間の賃金差の存在が明らかになっており、雇用負担金導入の根拠となる状況はすでに日本にもあるといえる。

(続きは全文紹介をご覧ください。)

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