地方公務員の能力開発に関する調査報告

2023/05/22 山下 八重子
地方自治体
自治体
組織
自治体経営

少子高齢化に伴う人口減少や行財政改革を背景に、将来的には地方公務員の定数抑制も見込まれる中、特に行政職においては、個々の職員が業務上必要とされる能力を身に付けるとともに、それらをブラッシュアップすることで、より効果的・効率的に業務を推進することが求められます。

また、特に総合計画や各種分野別計画など、計画策定業務には、文書作成やデータ分析・推計、市民参画等におけるファシリテーションスキルといった、複数の能力を総合的に身に付けていることが求められます。

そこで、三菱UFJリサーチ&コンサルティング自治体経営改革室では、全都道府県、市区町村を対象として、地方公務員の能力開発に関する調査を実施しました。

本調査では、地方公共団体の業務における各種スキルやコミュニケーション能力、ネットワーク構築等の重視度を把握することで、地方公務員に求められる能力(開発が必要と考えられる能力)を概観するとともに、地方公共団体の人事担当課が抱える課題や工夫の具体的な内容の把握を試みました。

本調査が、行政職員の効果的な能力開発の方策を検討いただく際の参考となれば幸いです。

<調査結果概要>

■調査対象

全国の都道府県、特別区、政令指定都市、中核市、一般市(合計862団体)の人事担当課
回収数:277団体 回収率:32.1%

■調査結果概要

1.行政職職員の年齢構成・人事異動について

  • 行政職職員の年齢構成は、「ベテラン層・中堅層・若年層が適度にバランスしている」、または「中堅層に偏っている」団体の割合が高く、職員の高齢化や定年に伴う大量退職が懸念される団体は、回答団体の中では比較的少ない。
  • 人事異動の間隔は、概ね3~4年程度としている団体が多い。
  • 人事異動にあたっては、組織全体の戦略や欠員補充、職員本人の適性が重視されているが、個々の職員のキャリアパスや職員本人の希望を重視する割合は比較的低い。
  • ジェネラリストの育成だけではなく、スペシャリストの育成も一定程度意識されていることが推測される。

2.政策を推進するうえで必要な行政職職員の能力等について

  • 非管理職では、「所属部署が所管する業務の専門知識」、「住民向けのわかりやすい公表資料の作成」、「対人スキル(窓口業務等)」等の基本的スキルが重視されており、管理職では、それらに加えて、「事業全体を俯瞰したマネジメント」、「各方面(庁内・庁外)との調整」、「取組評価のための目標・指標設定」など、より高度なマネジメントスキルや折衝スキルが重視されていることがうかがえる。
  • 一方で、EBPMやビッグデータ分析等に求められる「統計の収集・分析」や「人口や経済データ等の推計」、市民参画や協働の推進に求められる「ファシリテーションスキル(市民参画のワークショップ等)」の重視度は、職位を問わず、相対的に低くなっている。
  • 業務上のネットワーク構築については、非管理職・管理職とも、庁内(同等職位まで・上位職位)及び協働相手先など、内部(またはそれに準ずる対象)とのネットワーク構築がより重視されていることが推測される。ただし、管理職では、上級職位の庁内職員や、自市区がある都道府県の職員、学識経験者とのネットワーク構築の重視度が非管理職よりも高く、各種調整や情報共有、専門的な知見の活用が役割として期待されていることがうかがえる。
  • 特定の知見や技術的要素が求められる実務の技能やコミュニケーションに関係する技能では、配属される部署によって経験しないことや、特定の職員しか保有していないことが課題とされており、必要な取組として、研修や勉強会で学んだ知識や技術の実践による定着の重要性が認識されていること、特にコミュニケーションに関係する知識・技能でその傾向が強いことが推測される。
  • 所管業務の専門知識については、経験豊富な職員から次の世代の職員への知見の承継が進みにくい状況があることがうかがえるほか、OJTだけでは必要な知識の全てを習得しきれないとの認識が背景にあることが推測される。そのため、体系的な知見の共有・承継の仕組みの構築と、OJTにおけるそれらの知見の実践との組み合わせによる効果的な習得の必要性が認識されていることが考えられる。
  • マネジメントについては、属人的な資質や経験に委ねられており、マネジメント人材の組織的な育成に課題があることが推測され、個々の職員のキャリアパスの考慮も含めた、体系的かつ連続的な能力開発の視点の必要性に対する認識がうかがえる。
  • 業務上のネットワーク構築に関しては、「配属される部署によって構築機会がないことがある」ことが最大の課題であり、人材のデータベース化やノウハウの伝授などの情報提供ではなく、業務や研修、交流など、実際に相手先と会い、様々な機会を共有する取組が求められている。

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