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中谷巌コラム

民主党経済政策への期待

2009.10.14

三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長 中谷巌

 いよいよ鳩山民主党が本格始動を始めた。自民党の従来の手法とは打って変った政治主導を意識した積極的な動き(天下りの禁止、概算要求の全面見直し、ダム建設中止など公共事業の見直し)などが多くの国民の目には新鮮に映っているのではないか。もちろん、被害を受ける関係者はこの限りではないだろうが。
 民主党政権誕生の意義とは何か。それは選挙による「政権交代」が日本でも起こりうることを実証したことであり、もう一つは、行き過ぎた「新自由主義」に対して国民が「NO!」の意思表示をしたということである。
 こうして誕生した鳩山政権のスローガンは「友愛」と「環境」である。「友愛」は「EUの父」と呼ばれるカレルギーの言葉からとったものである。カレルギーは自由や平等はそのいずれかが行き過ぎるときしばしば人間の尊厳が冒されることになるため、自由と平等の均衡を図る「友愛」という理念に行きついた。
 事実、平等を理想化した共産主義も、自由を求め過ぎた新自由主義も、人間の尊厳を損ないかねない様々な社会問題(抑圧、貧困、不平等、社会の温もりの消失など)を生み出した。そのことを考えると、「友愛」という理念には共感できるところが多い。
 「環境」も最重要課題である。今回、鳩山首相が温暖化ガス1990年比25パーセント削減の決意を国連において表明したことは画期的な出来事だった。多くの国民は大きな喝采を送った。もちろん、鉄鋼や電力など、エネルギー多消費型の産業は大反対であった。実際、1990年比25パーセント削減という目標は尋常なことでは達成できないとてつもない目標だからである。
 しかし、考え方次第ではこの決意表明には大きなメリットもあると思う。何と言っても日本の存在感が国際社会で示された。日本のトップがこれまでこのようなリーダーシップを発揮したことはなかったからである。しかし、ここまで大見得を切った以上、あとはあらゆる政策手段を動員し、国民の環境意識を抜本的に変え、日本が圧倒的な環境先進国になるべく邁進するしかない。これは大変なプロセスではあるが、もしそれが実現すれば、それは日本にとっても、世界にとっても素晴らしいことに違いない。
 さて、問題は「友愛」と「環境」いう素晴らしい基本理念が民主党の具体的政策にどのように具体的に反映されるのかという点であるが、現時点ではそれはまだまだ十分ではない。「友愛」「環境」という大きな軸がぶれないように、すべての政策がそこに向かって実行されることが望ましい。「友愛」は人間の誇りが損なわれないように、弱者への配慮をし、所得分配の平等を確保することが基本だ。しかし、「こども手当」や「農家個別所得補償」だけでは不十分であることは明らかだ。「環境」についても、まだ充分な政策は示されていない。むしろ、「高速道路無料化」「ガソリン暫定税率廃止」は温暖化を加速するものであり、「鳩山イニシアティブ」とは矛盾する。このあたりの調整が必要ではないか。たとえば、「ガソリン暫定税率廃止」についていうと、ここから捻出される2兆6千億円を「環境」のために使うという考え方はいかがであろうか。
 いずれにしても、民主党政権がこれから「友愛」や「環境」という基本理念に即した大胆な具体策を次々に出していって欲しいと思う。それこそ、国民が今回の選挙で民主党に期待したことだからである。

中谷巌 中谷 巌 Iwao Nakatani
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 理事長
一橋大学経済学部卒業。ハーバード大学Ph.D(経済学博士)を経て、大阪大学経済学部教授、一橋大学商学部教授を歴任。現在、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 理事長 。

(注)

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