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中谷巌コラム

日本の安全保障

2009.12.24

三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長 中谷巌

 日本の歴史を鳥瞰してみて、現代日本はどのようなところに位置しているのだろうか。日本という国の存続を考えた時には、安全保障の観点が一番重要だろう。安全保障という観点から特筆すべきなのは、日本という国が長い歴史の中で、異民族による完全な制圧・支配をほとんど受けなかったという点である。
 弥生人が紀元前3世紀ごろ、大陸から稲作文化を持って渡ってきたとき、それ以前に居住していた縄文人と摩擦があったが、弥生人が縄文人を制圧するという形にはならず、時間をかけて互いに融和した。最大の危機は蒙古襲来であったが、2回にわたって神風が吹き、撃退することに成功した。このとき、もし元の襲来に屈し、占領されていたなら、日本という国のかたちはよほど大きく変わっていたことであろう。
 後は、言うまでもなく、大東亜戦争敗戦後のマッカーサーによる日本統治がある。日本の主権は奪われ連合軍が日本に駐留したが、アメリカ人が日本人の土地を奪い、略奪し、永住したわけではない。昔のヨーロッパ大陸に異民族同士の戦争とは性質が違った。このように、日本が異民族に完全に征服され、奴隷のような身分に貶められるということは歴史上一度もなかったと言える。これこそ、日本という国の国体ということを考えるときに最も重要な点であろう。日本が将来、異民族に征服されないで独立を堅持するという歴史上類まれな特質を日本は今後も維持できるのだろうか。
 それは実は決して自明ではない。フランスの思想家ジャック・アタリは『21世紀の歴史』の中で、これからの世界は食糧やエネルギー、水資源の不足などが原因となって絶望した民族が国境を越えて移動し始め、そのことが引き金になって民族同士の紛争が常態化する「超紛争」の時代が来ると予言しているが、そうなったときに、日本はどのような状態に置かれることになるのか。現代日本の安全はアメリカ任せの状態だが、仮に十年、二十年先にジャック・アタリが予言するように、アメリカが世界の警察官の役割を果たせなくなり、「超紛争」の時代に入ったとした場合、日本に何が起こるのだろうか。
 おりしも、鳩山首相の「日米同盟は緊密で対等な関係」という発言と、「普天間基地の移転問題の長期化」で、日米関係に一定の変化が起こる兆しが見える。日米同盟がこれですぐにひっくり返るといった事態はすぐには起こり得ないだろうが、いずれにしても、彼のアメリカに対してとった態度は、日米同盟は至上の命題、前提条件ではなく、日本がそろそろ自国の安全保障について自ら考え始め、選択すべきだという時代の転換を予告しているのかもしれない。
 いずれにせよ、十年、二十年先の日本にとっての安全保障の選択肢は次の4通りだろう。
 (1)日米同盟を継続できるようにあらゆる外交努力をする。
 (2)日米同盟は破棄し、中国、東アジアの国々と同盟関係を結ぶ。
 (3)自主防衛路線のため、軍備を国際水準並みに増強、核武装もありうる。
 (4)世界唯一の被爆国として「非核・非武装中立」を貫く。
 さて、読者はこのうち、どのような理由で、どの選択肢を選ばれるのだろうか。日本人が「平和ボケ」で済んでいた「結構な時代」はそろそろ終焉を迎える。

中谷巌 中谷 巌 Iwao Nakatani
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 理事長
一橋大学経済学部卒業。ハーバード大学Ph.D(経済学博士)を経て、大阪大学経済学部教授、一橋大学商学部教授を歴任。現在、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 理事長 。

(注)

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