ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > サーチ・ナウ:公的機関の「マネジメント」の本質
サーチ・ナウ
2007.03.26 サーチ・ナウ:公的機関の「マネジメント」の本質
公共経営・公共政策部(東京) 主任研究員 荒川 潤
○公的機関のいわゆる行財政改革をお手伝いする立場として、「経営」の意味は官と民とで同じなのか、とのご質問を頂戴することが多い。(その言外には、官と民とは異なるのだから、民間経営手法の公的機関への導入には課題が多いのではないか、との示唆が含まれている。)ここでは、経営学の顕学P・F・ドラッカー「マネジメント【エッセンシャル版】」(ダイヤモンド社、2001年)をヒントに、少し考えてみたい。
○要は、公的機関でも民間企業でも「経営」の意味するところの本質は同じだが、組織の特質には異なる点が確かにあるので、経営上の留意点は異なってくる、ということなのだろうと考える。
○仮に、氏の指摘のように、経営の目的は「顧客を創造すること」だとすると、組織の経営者は、経営資源を駆使して、市場が必要とするような「価値」を創造すると共に市場に適切に提供して、そのニーズを満たそうとする。ここで、市場を住民に、価値を公共サービス(もしくは地域課題の解決)などに置き換えてみると、経営に関するこのような考え方は、公的機関にもそのまま適用しうるものであることが分かる。
○もちろん、官民での経営の違いは明らかに存在する。氏の「予算型組織では、成果とはより多くの予算獲得である。」「したがって、成果という言葉の通常の意味、すなわち市場への貢献や目標の達成は二義的となる。」との指摘を今更踏まえるまでもなく、公的機関と民間企業(採算部門)との支払いの受け方の違いとそれによる行動様式の違いについての認識は、すでに広く共有されている。
○大事なのはここからである。氏が数十年も前に指摘していたのは、公的機関は成果と報酬の関係をこのように誤解しがちなので、目的・目標をはっきりさせた上で厳格に評価して、このような誤りを「中和」することが重要だ、ということであった。過去10数年間に、我々のような立場が強調してきたような「民間企業のPDCAの発想を公的機関にも導入して、政策評価・行政評価を重視する」のではなく、公的機関の経営であるがゆえに民間企業以上にPDCAの徹底が重要、ということである。しかも氏は極めてさらっと、「このような誤った方向づけを皆無にすることは至難である」とも述べる(このすぐ後が、上記「中和」の件である)。
○このように考えてくると、欧米の公的機関で導入され始めて、わが国でも関心が高まっている「業績予算」(Performance-based Budgeting)制度は、評価と予算とを組み合わせるものであり、氏の言葉を借りると、いわば「中和」を制度化するような取り組みであることが分かる。どうりで、どの国・自治体でも、その浸透に時間と工夫とを要しているはずである。しかし同時に、導入浸透のカギも、"如何にすれば評価情報が予算編成の「参考資料」から脱却しうるのか、"にあることが見えてくる。