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サーチ・ナウ
2007.08.13 行政改革と公共経営を考える
〜独立行政法人を題材に〜
本稿では、独立行政法人を題材に行政改革との対比で公共経営の重要性を論じてみたい。両者の違いは、独立行政法人から見て、行政改革が他律的な(他からもたらされる)活動であるのに対して、公共経営は自律的な(自らが行う)活動であるという点にある。
本年6月19日の閣議決定「経済財政改革の基本方針2007」において、「政府が果たすべき機能の見直しの第一弾として、独立行政法人の改革を行う。現行の独立行政法人が制度本来の目的にかなっているか、制度創設後の様々な改革と整合的なものになっているか等について、原点に立ち返って見直す。」とされ、具体的には、独立行政法人見直しの3原則((1)「官から民へ」原則、(2)競争原則、(3)整合性原則)に則り、本年末までに行政改革推進本部が「独立行政法人整理合理化計画」を策定することになった。これは、他律的な活動としての行政改革の目玉として独立行政法人が取り上げられることが宣言されたものと言うことができる。
ところで、筆者の問題意識は、他律的な改革では本当に必要なことが実現できないということにある。これまでも独立行政法人に対しては、厳しい財政状況を反映して、効率性の観点が強調された改革議論は行われてきたが、本来あるべき、必要性、有効性、効率性のバランスのとれた議論は熱心に行われてこなかったと思う。そもそも独立行政法人は効率性のみに主眼が置かれた制度ではない。かつて特殊法人に対して指摘された問題点((1)経営の自律性の欠如、(2)経営責任の不明瞭性、(3)事業運営の非効率性・硬直性、(4)経営内容の不透明性、(5)組織・業務の自己増殖性)を克服し、「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務・事業」(独立行政法人通則法第2条第1項)を担う主体として設計された制度である。その特徴は、組織・業務の運営を極力現場の裁量と責任に委ね、自主的・自律的な活動を通じて、効果的・効率的な行政サービスの提供を目指すことにある。したがって、制度本来の趣旨に立ち返るならば、独立行政法人のあり方は、本当に担うべき業務を行っているか(必要性)、効果的に行っているか(有効性)、効率的に行っているか(効率性)の3つの観点から総合的に問われるべきである。そして、その判断を行う際に、民間企業経営に範を求めた公共経営が法人において実践されていることが前提となるのである。なぜならば、独立行政法人が公共経営を自ら実践した結果として、経営に係るデータを提供することによって始めて、3つの観点からの総合的な判断が可能となると考えられるためである。逆に言えば、独立行政法人は、公共経営の実践の具体例として創設された制度と評することもできる。独立行政法人で自律的な公共経営の観点を強調すべきなのは、このような背景があるためである。
しかし、残念ではあるが、現状多くの独立行政法人では公共経営の実践が不十分なため、特に、有効性の観点、すなわち、独立行政法人が期待された成果を挙げたかどうかを判断する上で必要となるデータを十分に提供できていない。独立行政法人が公共経営を確立した上で、その必要性・有効性・効率性を自律的に説明できない限り、制度設計本来の趣旨を実現することはできない。その意味において、現在独立行政法人に問われているのは、公共経営の確立である。独立行政法人において公共経営を確立するべく、真摯な活動が行われることを強く期待する。そのためには、独立行政法人にそのような活動に向かわせるためのインセンティブを用意することが必要なのかもしれない。効率性に偏重した他律的な行政改革の議論を繰り返すだけでは、特殊法人の反省の上にたって制度設計された独立行政法人の本来の趣旨は実現できないない。むしろ、結果として独立行政法人を「第二の特殊法人」にしてしまう懸念がある。決してそのようにしてはならないのである。