ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > 我が国に求められる経済政策とは
サーチ・ナウ
2007.10.22 我が国に求められる経済政策とは
我が国の経済状況は2002年以降回復局面に入り、戦後最長の景気回復期とされているいざなぎ景気を超えて現段階(07年9月)までは息の長い好景気が続いている。しかし非正規雇用の増加、都市と地方の所得格差の拡大、累積する財政赤字、投資の増加が消費の拡大に十分に結びついていないといった観点からすると景気回復が本格化しているとは言い難い。このような状況下で今後我が国にとって求められる経済政策とはどのようなものだろうか。以下ではG7先進国との経済状況の比較を通じて我が国が目指すべき経済の姿を明確化しつつ、求められる経済政策について論じてみることにしたい。
1.先進国との比較による我が国経済のパフォーマンス
まず、IMF,World Economic Outlook(WEO)からG7各国の動向をみよう。図表は名目GDP成長率(自国通貨ベース)、実質GDP成長率(自国通貨ベース)、物価上昇率、失業率、一般政府の財政バランスの対名目GDP比について我が国と成長段階が似通っているG7各国の状況の比較を行ったものである(参考図表1〜5)。
これらの指標から90年代後半以降の我が国の経済状況について指摘できる点は以下だろう。
|
つまり、名目GDP成長率は先進国最低水準にまで落ち込んでいるが、それはデフレに陥っているためである、実質GDP成長率は回復傾向にあるものの2000年代前半の平均値はG7諸国の平均は届かず、失業率は継続して上昇した、名目GDP成長率の低迷に伴う税収の低下や累次の経済対策による財政支出増が財政赤字を拡大させた、というのが我が国の姿であったわけだ。
2.求められる経済政策
我が国が目指すべき経済の姿とはどのようなものだろうか。1.での比較から言える点は、a)実質GDPを2%程度の水準に保ちつつ、b)デフレ脱却の後+2%弱のマイルドな物価上昇率を達成し、c)その過程で失業率を出来るだけ低位に押さえ込む、というものだろう。実質GDP成長率2%、+2%弱の物価上昇率を達成すれば名目GDP成長率は4%弱となる。長期金利の上昇はあるだろうが06年度の名目GDP成長率が1.4%であることを考えると名目GDP成長率を高めることは税収の増加を伴いつつ財政赤字の削減に大きく寄与する筈である。
具体的な経済政策としてはどのようなものがあるだろうか。まずa)については現行の成長戦略やFTA戦略を推進することを通じて生産性を高めていくことが必要だろう。中長期的には法人税負担の軽減や政策減税の充実をはかりつつ成長のエンジンたる企業部門にとって魅力ある環境を整備することも必要だ。b)についてはデフレ脱却のため、日銀が適切な政策を遂行していくことが求められる。将来的には多数の先進国が採用しているインフレターゲット政策の導入や財政政策と金融政策を一括して管理する「経済政策決定部門」の創設といった制度整備を視野に入れるべきである。c)についてはフィリップスカーブが中長期的に成立していることを考慮すれば、+2%程度の物価上昇率は失業率を現行の3%半ば以下に低下させることは明白である。労働力人口が減少する中で、これまで以上に失業率を減らし労働力を有効に活用していくことが必要だろう。
ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ教授は緊縮財政、民営化、市場の自由化という「ワシントンコンセンサス」を批判し、「政府」と「市場」の適切な役割分担を模索しつつ完全雇用を目指すという「第三の道」を提唱している。これは「いざなぎ超え」を果たした現代の経済政策を考える上で極めて示唆に富む理念である。90年以降の大停滞期には55年体制が崩壊し政局が不安定化したことが迅速な経済政策の発動を遅らせたとの指摘もある。現在も衆参ねじれ現象に伴う政治の混迷がしばらく続くと見込まれるが、与党・野党ともに目標とすべき経済パフォーマンスを明確化した上で経済政策として今何をなすべきか、そして中長期的に何をなすべきか、活発な議論を期待したい。

