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サーチ・ナウ
2007.11.05 新ウォー・フォー・タレント
〜企業内人材育成の高度化競争〜
最近の企業アンケートでは、経営の重要課題として「人材育成」がトップに躍り出ている。企業の労働費用における教育訓練費の割合は十数年ぶりに上向きに転じている。バブル経済崩壊後に真っ先に削られたのが教育訓練費だったことを考えると、隔世の感がある。
「ウォー・フォー・タレント(War for Talent)」。2000年頃、アメリカで企業が優秀な人材の獲得・育成のために戦った現象を指す言葉だ。現在の日本企業は、新たな「ウォー・フォー・タレント」に直面している。多くの企業が、一時凌ぎに人材を外部から獲得するだけでなく、内部で育成することの重要性を痛切に感じている。
しかし、過去何年も人材投資をおろそかにしてきたツケとして、人材育成の実施体制の形骸化と研修内容の陳腐化が起きている。人材育成活動は部門毎にバラバラで、自社の全体の活動すら把握できていない。研修内容はコスト削減の中で目先の目的にしか対応しておらず、陳腐化が激しくいため長期的に役立たない。日本企業が頼りにしてきた職場のOJTは弱体化している。さらに、このような状況を改善するリーダーシップを担うべき人材育成のプロは不在である。そもそも日本企業には、人事のプロはいても人材育成のプロは少なく、バブル崩壊後の「失われた10年」の間に益々脆弱になっている。
しかし、不景気の中でも地道に人材投資を継続してきた企業は、いまこの戦いで着実に成果をあげている。当社が執筆を担当した過去3年間の『eラーニング白書』(経済産業省編)では、先進的な人材育成に取り組んでいる数十社にのぼる優良企業の事例研究を行なった。そこから導き出された、この戦いを勝ち抜くキーワードは、人材育成の「パーソナライズ化」、「全体最適化」、そして「高度IT活用」である。
人材育成の「パーソナライズ化」とは、職務毎に必要な能力を明確にし、本人が望むキャリアステップに合った形で必要な能力開発の機会を個別のニーズにあわせて提供することである。例えばA社は、本人の望むキャリアステップに必要なスキルをイントラネット上で明示し、適切な研修を推奨し、メンタリング等を実施して社員の自己研鑽のモチベーション向上をはかっている。単に社員の希望をくみ取るだけではなく、企業が必要とする人材像の明確化とそれに至る道を示すことにより、社員の自律的な育成をはかっているのである。
次に、人材育成の「全体最適化」とは、従来は人事部門と事業部門でばらばらに行なわれていた人材育成活動の全体図を描き直し、重複やムダを無くし、対象者を整理して、優れた研修内容・手法を共有し広めることである。例えばB社は、企業内大学を設立して研修の体系化や経営理念の浸透をはかり、組織への帰属意識を高めるとともに社員に自律的なキャリア形成の取り組みを促している。これまで社員にわかりにくかった自社の能力開発活動を大学の教育組織になぞらえて、「見える化」しているともいえる。さらに、全社員向けだけでなく、緊急課題である次世代リーダー育成プログラムの位置づけ明確にして進めている。
そして、これまで述べてきた各種の人材育成活動を有機的に繋げて効果的に実現するのに必要なのが、人材育成の「高度IT活用」である。これは研修でeラーニングを導入するといったレベルを超えて、人材マネジメントのIT化ともいえる。社員一人一人の能力や研修履歴とキャリア希望を、IT支援型人材育成プラットホーム上で連携させ、「パーソナライズ化」と「全体最適化」の実現を容易にするのである。企業内大学の中には、全てをオンライン上に構築するものもある。さらに、IT活用で、能力開発の内容・手法の質的向上に取り組んでいる。これはホワイトカラー向けだけでなく、「2007年問題」と呼ばれる技能継承問題にも当てはまる。ITを駆使することで、ものづくり現場での熟練技術者のノウハウを「見える化」し、熟練と若手のコミュニケーションを活発化させ、効果的な技能継承を実現している。
この新たなウォー・フォー・タレントを勝ち抜くためには、3つのキーワードを満たす戦略的な人材投資で人材育成の体制と内容の改善を進めるとともに、これから長く続くこの戦いを担うべき社内の人材育成のプロを育てながら、「企業内人材育成の高度化競争」に打ち勝つことが求められている。