ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > サテライト大学院による地域産業強化の可能性
サーチ・ナウ
2008.02.18 サテライト大学院による地域産業強化の可能性
地域における高度な産業人材の育成は地域活力の維持・向上にとって重要なものであるが、人口減少と高齢化が進行する中で、地方都市では従来にも増して高等教育機関の新設が期待しにくい状況となっている。しかし、サテライト大学院(サテライト教室)は、大学の学部や本校と比較すると小規模の施設・体制での設置が可能である。したがって、遠くない都市にある大学院からのサテライト大学院の誘致は、地域における産業人材育成のために有効な手段の1つであると考える。
サテライト大学院は、社会人学生の受け入れの円滑化のため、時間的制約の多い社会人であっても授業を受けやすいよう、校舎以外の通学の便の良い場所で大学・大学院の授業を行うものである。現在のサテライト大学院では、教育のターゲットとなる就業者が多い、三大都市圏の都心部等、人口集中地区に設置されているものが目立つ。
しかし、大学の本校がない地方都市でも、サテライト大学院が進出して地域企業の人材育成ニーズに対応し、高度な産業人材育成を実践している例がある。それは信州大学大学院工学系研究科情報工学専攻「組込み技術者育成コース」で、長野県塩尻市(人口68,346人(資料:総務省統計局「平成17年国勢調査」))が地域の民間企業と共同で整備した塩尻市インキュベーション施設に平成19年度開設されたものである。塩尻市と信州大学は、平成15年から信州大学・塩尻市連携プロジェクト研究所を塩尻市に設置する等の協力関係にあり、これをステップとして地域の産学官が連携して塩尻市にサテライト型の大学院を設置し、人材が不足している組込みソフトウェア技術者の育成に取り組んでいる。
地方都市のサテライト大学院では、職業や家族のある社会人学生を広域から集めることは難しい。したがって先の塩尻市での例にみられるように、サテライト大学院の設置にあたっては、特に地域の産業界の賛同・協力が不可欠である。地域企業がサテライト大学院に積極的に社会人学生を送り出してくれるようなプログラムにするだけでなく、産業界からの教育参加(講師派遣、教材開発等)を得ながら、社会人学生にとって魅力ある大学院教育を追求し続けることが必要であると考えられる。
地域の産業振興に向けた長期的な観点からは、サテライト大学院における社会人学生や卒業生の存在が大学界と地域企業の敷居を低くし、イノベーション型産業の創出に向けた産学共同研究等の素地となることが期待される。地域の産業界が取り組む価値を認める社会人教育の領域を見出し、実施に向けた産学官の協働体制を構築できるかどうかが、サテライト大学院による地域産業強化の鍵といえる。