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サーチ・ナウ
2008.03.24 政府の組織・人員マネジメントの改革の視点
公共経営・公共政策部 主任研究員 左近 靖博
○政府組織に求められる使命及び将来に照らした人的資源の検討
・1990年代以降、先進諸国を中心に政府のマネジメント改革が不断かつ熱心に行われている。このマネジメント改革は、政府の役割や規模を見直して民営化やアウトソーシングを進め、小さな政府へと転換させる取り組みからスタートし、その後、1990年代後半からはスリムになった政府本体のマネジメントの抜本的な見直しを進める段階へと移行しており、近年では特に人的資源(Human Resource)の改革が本格化している。
・改革の先頭を行く代表的な国は、米国、英国、カナダである。これらの国では、政府機関や組織が果たすべき役割及び使命(Mission)を明確にした上で、その使命を遂行するために、中長期的に必要となる人的資源及びサービス調達の内容(アウトソーシング等)を明らかにする計画が策定及び実行されている。この人的資源計画の特徴を概観すると、以下の2点に整理される。
⇒将来の視点: 現状よりむしろ将来を見据え、役割及び使命の遂行に必要な政府の組織能力の分析(現状と将来のギャップ分析)を行うこと
⇒多様性の視点: 上記の分析結果を基に、正規職員の新規の定期採用の他、中途採用や任期付任用、また民間コントラクターの活用など、多様な人的リソースを視野に入れた労働力分析(Workforce Analysis)を行うこと
・上記三カ国では、1990年代後半に省庁・機関が自らの目標を掲げてマネジメントを行う業績マネジメントの枠組が人的資源計画に先行して導入されており、これに続き2000年以降において、この業績マネジメント枠組に対応した人的資源のあり方の検討(人的資源計画の策定)が本格的に実施されるようになった、というのが改革の大きな流れになっている。
○数字のみを追求する人員削減の罠
・実は政府のマネジメント改革を積極的に進める欧米諸国で、このように業績マネジメントに続いて、人的資源計画の策定が進んだことの背景にも共通性がある。一つは、行政が対応すべき課題が高度かつ複雑なものとなり、行政ニーズへの対応がより困難になったこと、そして二つ目は、過去の公務員の定数削減に伴って弊害が生じたことである。
・このうち後者は、各国において1990代に公務員の定数削減を短期間にかつ大規模に進められた結果、特定の能力が求められる官吏が欠如したことや、優秀な人材がこぞって流出してしまったことに起因している。また、自主退職を通じて定数削減を強力に進めたことで若手・中堅層の退職が進み、結果として公務員の平均年齢が上昇し、さらに今後、ベビーブーマー世代の大量退職が目前に控えていることから、将来にわたって組織の運営能力を持続して維持できないという状況に陥ったという点も共通している。
・1990代に実施された公務員削減の取り組みをレビューするレポートでも、政府に必要な機能や役割、求められる人材を検討せず、公務員削減改革が進められたことが問題と指摘されている。
○我が国改革に求められる視点
・一方、我が国の取り組みに転じると、2005年12月に閣議決定した総人件費改革実行計画で、2006年度からの5年間で5%以上の国家公務員定員の純削減目標が掲げられ、その実現に向けての調整が現在進められている。1990年代に主要国が取組んだ定数削減に関する改革の内容や結果及びその経験を基にすれば、「政府の使命と戦略の明確化」及び「将来ビジョンと現状のギャップの可視化」を前提に、「人的資源の多様性、弾力性」の視点から国家公務員削減を検討すべきではないだろうか。
・そのような視点から我が国の取組を概観すると、現在の総人件費改革実行計画は、不要・不急な部門に所属している公務員数の削減のみに焦点があてられているのではないかと思われる。改革を進める際には、目的や目標を明確かつ単純にすることも確かに重要であるが、公務員削減を進める際には、政府部門の将来像及びそれを前提にした組織・人員のあり方を中長期的な視点で捉えることが前提として求められる。
・より具体的には、少なくとも政府の規模や役割を見直す「国と地方の役割分担の見直し(地方分権改革)」や、政府職員の採用等のあり方を見直す「公務員制度改革」、そして業績マネジメントの基幹に関わる「政策評価制度(ミッション・マネジメントの視点導入)、予算管理の手法(業績予算の導入)、定員管理の手法」のあり方の検討と、公務員削減の取組との間できちんと整合性を維持することが求められる。現状、いずれの取組も政府内で個別に検討が進められ、かつレベルにも濃淡があることから、マネジメント改革の視点から、これらを全体として一体的に捉えて、議論及び検討する姿勢と方向性が、今後求められることになるだろう。