ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > 中部地区の将来に思うこと

サーチ・ナウ

2008.04.14 中部地区の将来に思うこと

政策研究事業本部 執行役員 名古屋本部長 西村 晴樹

 自分が居住している地域が30年後はどのような姿になっているのだろうと想いを馳せる時、30年前の生活環境を思い起こし、当時と現在を比較すると驚くことも多いのではないでしょうか。最近、新聞が中部経済同友会の某委員会が提言した将来の地域のあり方として「環境創造力No-1大名古屋圏」を取上げ結構な反響を呼んでいます。ものづくりに強みを持ち安定的な成長を維持している中部地区ではありますが、歴史的転換点である生産労働人口減少という課題を乗り越え、強い産業基盤を維持するためには地域の魅力度向上が喫緊の課題であるとしています。
【中部地区の課題】
 確かに中部地区はものづくりにおいては他地域を凌駕していますが、一方で、総合的なものづくり産業基盤の観点からは課題もありそうです。中部地区は特に自動車や航空機部門で大きな裾野を持ち、その結果として安定的な雇用を創設している反面、先端技術開発研究所や大掛かりな実験施設は関東地区には及ばず、開発から製造、組立、検査までの総合的な産業基盤のインフラ作りが必要ではないかとの声も聞こえてきます。
 また、ものづくりにありがちな質実剛健な地域として情報発信は苦手であり、中部地区の認知度は低いようです。今回の中部経済同友会の提言に、打開策の一案としてセントレアに隣接する常滑に情報発信拠点として「平成の出島」構想があるのも頷けるところです。
 加えて、最近でこそ名古屋駅周辺では高層ビルが建築され名古屋の摩天楼と言われていますが、特徴の無い街としてのイメージもまだ根強いようです。
【中部地区の強み】
 一言で言うと安定度のある地域と思います。
成長にはイノベーションが不可欠と言われますが、重要なことは安定度の上に立つイノベーションです。こだわりを求め続ける匠の技も、民間貿易再開が許された1947年以降「安かろう悪かろう」といわれ続けた日本製品を、誇りと志を捨てずに世界一に仕上げた精神も日本の安定度が成しえたものと思います。
 安定度としての中部地区の強みの一つは、高い産業集積を背景にした安定した雇用でしょう。この安定した雇用状況こそが、もう一段次元の高いものづくりを目指す原動力になっているように思えます。
 安定した生活基盤も強みの一つです。団塊世代の定住志向調査を国土交通省が実施していますが、中部地区は東西地域に比較し定住志向が高いとの結果が出ています。通勤時間や物価などを考えると生活するには大変便利で快適な街なのです。
  そして、行政、民間、大学との安定的な連携の強さも挙げられます。最近の事例として中部国際空港や愛知万博などはその好事例だと思います。
【中部地区の方向性】
 日本の中心に位置した特性を活かし、「中部らしさ」を高度な産業基盤を梃子とした得意分野で確固たるものにしていくことだと思います。つまり、極めた得意分野を情報発信することで、日本や全世界がこの地域に興味を持ち、研究や産業・サービス活動で活発に交流が図られ、自然に人が集まり、日本の中心に位置するこの地域が更に元気になることが、ひいては日本全体の産業基盤の底上げに繋がり全世界への貢献にも繋がっていくのではないでしょうか。そして、そこには共存共栄の感性が高まり環境分野や技術分野などで更なる付加価値の向上も目指されるはずです。日本の中心に位置する中部はその役割を担っているように思えてなりません。JR東海の須田相談役が定住人口より交流人口増加の重要性を言われていますが、正に上記の考え方に一致しています。
 この推進のために特に重要なことは、行政界を超えた施策・推進です。
道路や空港など社会インフラが充実した現代では人の行動範囲は格段に広がっています。インフラが充実したことで時間距離は一層短縮化され、この短縮化は行政の施策に変革を求めています。インフラはあくまでも道具に過ぎませんが、広域に活用することでダイナミックな交流を産み出すはずです。例えば、政府が提唱している観光立国推進などでは特に必要なことです。そして、こういった行政界を超えた展開は現在検討されている道州制のあり方に繋がっていくはずです。
 また、産学官連携の更なる強化も不可欠でしょう。それぞれが役割分担を認識し責任を持って推進する連携の重要性は今更述べる必要も無いと思います。
 ものづくりも先端技術の開発も全ては人が成しえるものです。安定した産業基盤、生活環境が整ったこの中部地区だからこそ日本の将来を思い、一歩進んで未来の地域づくりを語りたいものです。

ホームこのページの先頭へ