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サーチ・ナウ
2008.05.12 密集市街地の改善は柔軟に
・ローカルルールで残される月島の雰囲気
この春から始まったNHKの朝の連続テレビ小説「瞳」の舞台は、東京の月島界隈。狭い路地に面して軒を連ねる家並みと、ホットな下町のコミュニティ。この独特の雰囲気がなかったら、このドラマは成立しなかったのではないだろうか。ところが、建築基準法が定める全国一律の規制に従うと、こうした雰囲気は維持できない。建築基準法では、建物は、4m以上の道路に面していることを義務付けているため、建替え時には、このルールに従わないと違法建築となってしまうからである。そのため、建替えたくても建替えができない状態が続いていたが、条例などの「ローカルルール」の採用によって、合法的に建替えができるようになったのである。具体的には、平成15年の建築基準法の改正により、地方自治体において法第42条3項にもとづく「3項道路」に認定すれば、2.7m以上4m未満の道路に面していればよいとされたのである。ただ、このままだと、道路斜線の制限が残るため、建替えできる床面積が小さくなることから、「街並み誘導型地区計画」という都市計画の手法を住民合意のもとに併用して、床面積を確保した建替えができるようにしたのである。実際、こうしたローカルルールに基づき、何軒かの家が建替えられているが、月島独特の雰囲気は、損なわれていない。
・進まない密集市街地対策
このように全国一律の法規制では、地域独特の町並み景観を残せないところで、ローカルルールの採用によって維持している事例はいくつかある。観光客で賑わう京都の先斗町や祇園、火災を乗り越え再生した大阪の法善寺横丁などもこうした事例である。
国は、このような狭い道路に古い住宅が高密度に集積し、防災面、居住環境面で課題を抱えている地区を密集市街地と定め、その中で、延焼危険性が特に高く地震時等において大規模な火災の可能性がある地区を「重点密集市街地」として、早急な改善を図るよう、密集市街地に関する法律等の改正を行ってきたが、密集市街地を抱える地方自治体の反応は冷ややかである。
密集市街地対策の必要性は認識しているものの、実際には、道路・公園の整備を進めるために膨大な費用と、住民説明などに新たに職員の配置が必要となることを恐れている。その上、長い時間かけて形成されてきた地域独特のコミュニティを壊してしまうことへの危惧や、反対に、不燃建築物への建替えが容易に進むはずがないとの思いもあるはずである。こうした様々な要因により、なかなか改善に手が出せない状況にあるものと思われる。
人口減少時代のわが国における密集市街地対策は、これまでのように道路や公園などハード先行、行政主導の再開発型ではなく、発想を転換して住民の建替え意欲や防火に対するエネルギーをうまく誘導していく手法を基本としていく必要があるのではないだろうか。月島などの事例のように、柔軟な発想でローカルルールをうまく活用して、地域の個性を損なわない形で、個々の建物が自立的に更新されていく姿が、それを示しているように思われる。