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サーチ・ナウ

2008.05.26 存在感を増すEU

政策研究事業本部 専務執行役員 東京本部長 清水 誠

EUの誕生が地球的規模で、ここまで広範な影響を及ぼすと予測したひとは、前世紀中には少なかったのではないか。 尤も、その影響力が目に見える形となってきたのは、この
10年、特に今世紀に入ってからのことではあるが・・・。

即ち、1990年前後から欧州に起こったベルリンの壁の崩壊、東西ドイツの統一、東欧圏の民主化、ソ連邦の崩壊等の歴史的大変革の中、EUの成立、単一通貨ユーロの導入と欧州中央銀行の創設、EU共通政策の深化(労働・福祉・競争政策等)に加えて、加盟国の旧東欧諸国への拡大の中で、軍事を除いた政治・経済・文化の側面で世界をリードする存在感を発揮し始めたのである。 また、1957年のローマ条約の締結以来、半世紀をかけて推進してきたEU統合へのプロセスは、彼らの得意とする中長期的な視点と普遍性を持った議論に磨きをかけ、欧州大の英知を結集する仕組みを構築してきたとも言えよう。

EUの基本政策には、現状三つの柱があると言われる。即ち、単一市場の拡大と深化による競争力の強化、社会的公正と福祉を前面に出した社会政策、加えて持続的発展の前提条件とも重なる、地球温暖化阻止や循環型社会実現に向けた環境政策である。

これらは相互に関連しており、客観的に見て、EUのソフトパワーの源泉になっていると考えられる。 市場については、EU誕生に伴い、人・物・金・サービスの移動に対する国境をなくして単一市場を成立させ、その後の拡大もあり、今や人口と経済規模で米国を凌駕する地位にある。 一方で、WTO,OECD等の国際機関における議論において、EUは統一的な主張を展開する他、巨額に上るODAや旧宗主国としての影響力もあり、誠に大きな力を発揮することが可能である。 更には、本来EU内の市場形成の為であった規格の統一がEU標準となり、これが国際標準となる場合も多々見受けられる。 例えば、携帯電話のGSMである。 また、地球温暖化対策でも、サステナビリティの視点からEUとして、温室効果ガスの大胆な削減を提唱する一方で、EU型排出権取引制度の分野で、世界を先導し始めている。 更にはREACHと呼ばれる、すべての化学物質を対象とする法規制を導入し、リスクアプローチへ向けて先陣を切っている、といった具合である。 社会政策については、欧州の欧州たる所以という自負もあり、北欧モデル、ラインモデル(ドイツ型)等、様々な違いを容認しつつも、メンバー国の政策情報をオープンに交流させた上での議論と調整を続けている。

さて、我国の現状をみるに、技術力では世界の先陣を切りながら、米国や近未来の中国のように一国でEUに匹敵する国内市場はなく、又、EUに続くアジア版地域統合を推進する段階にも至っていない。 むしろ孤立化さえ危惧される状況にあるといえる。

EUがその基本政策の起点に据えた持続的発展のコンセプトは、なにもEUや日本等の先進地域だけでなく、早晩中国も含めたアジア全体に対しても有用性を持つものと考える。こうした意味でもEUの基本政策に相当するものを実践しつつ、アジア大の政策形成に向けた議論を提唱し、その成長力を活かしつつ、協調と連携を推進する役割を果たせないものだろうか。

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