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サーチ・ナウ

2008.09.22 これからの生活圏と地域コミュニティの役割

研究開発第1部(大阪) 主任研究員 善積 康子

 医療、教育、公園、道路などの都市基盤施設は、住民の生活を支える機能として概ね歩いて暮らせる範囲(生活圏)に確保されることが望ましいとされてきた。いわゆるシビルミニマムであるが、昭和40年代後半に自治体改革理論として生み出された概念である。都市基盤がまだまだ未整備ななかで、基礎的な自治単位として『自律』コミュニティへの期待から、コミュニティの自主的な活動を支える基盤(公園、学校など)として位置づけるものを、生活圏を人口約1万人(大阪府)、また1km四方(枚方市)などの単位で設定し、またその達成目標を数値化し、自治体単位で達成させる計画を立てた。経済成長・人口増のシナリオを前提とする考え方であり、一定の目標達成は図られた。
 平成17年度からの国土計画見直しでは、「人口減少・急速な高齢社会」を前提とするもので、生活圏の考え方はその単位ですべての機能を確保するという発想から脱する必要性が指摘されている。例えば、福祉については、必要とする人が誰でも利用できるよう介護保険制度が導入され民間開放もあって基盤整備が進み、また生活圏域という概念が導入されて一定圏域における量としての資源確保が進められているが、それでも訪問・通所・通院等にも時間がかかる立地ではサービス提供者が確保されにくい現状がある。それではこれからの生活圏を考えるに当たり何を重視するべきなのだろうか。
 一つは、移送手段や情報通信機能を活用して広域で機能を共有することが可能な圏域であり、他方では身近な顔見知りの関係が構築できる圏域であろう(重層的な生活圏)。時間や距離の単位だけではなく、住民の年齢や仕事・趣味などの状況を考慮して地域ごとに組み立てていくことが考えられる。弊社が平成15年(2003年)に、某市において高齢者、障害者、子育て世帯、中学生、一般市民(20歳以上)を対象に実施した調査において、『地域(歩いて15分程度の範囲)でよく利用する公共施設』を尋ねると、中学生を除く対象者は「公園」「図書館」「公民館・公民分館」となるが、中学生は「小学校」が最も多い。馴染みのある場所と言うことだろう。また一般市民や高齢者は身近な地域でよく利用する公共施設は「特にない」とする回答が3〜4割ある一方で、子育て世帯と中学生はそうした回答が1割程度となっている。ここから、子育て・子育ち期は、実は生活の中で地域との関連が強くなる傾向にあることが浮かび上がってくる。
 もともと地域コミュニティを単位に基盤整備を図る発想であったにも関わらず、肝心のコミュニティを行政のパートナーとしてしっかり位置づけ、本質的な市民自治を育成することに行政として取り組んでこなかった。このためライフスタイルや住居形態の変化、居住地の流動化などで地域住民が多様化してくると、地域コミュニティはその変化に対応することが難しく、新しく住民となった人をはじめ、コミュニティに帰属する価値を見いだせない住民は自治会等から離れ、加入率の低下が目につくようになってきた。この結果、地域としての一体感が弱まったところでは地域の生活マナーなどが守られなくなったり、地域の景観が悪化したり、子どもの成長には適していない商業施設が出店したり、他人の目が行き届かないなかで子どもへの犯罪が増えてくるなどの状況が増えてきた。先の調査にもあるように、地域という単位は重要な軸であり、特に、主な行動範囲を地域においている子どもの成長には大きな影響を与える可能性がある。我々の大切な子どもたちの育ちに絞って考えると、顔見知りが作れる機会の多さや地域での子どもたちの居場所、祭りへの参加など地域とのつながりを実感できる機会(自分の存在意義を認識できる機会)を意識した圏域づくりは重要だ。併せて、圏域の設定だけでなくそうした地域社会を実現できるかどうかは地域コミュニティの自治力によるところであり、行政はそれをバックアップする"コミュニティ行政"に力を入れていかねばならないだろう。

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