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サーチ・ナウ
2008.10.14 サーチ・ナウ:介護保険「混合介護市場」の可能性
2009年4月から介護保険は第四期事業計画期間に入る。現在、各地の自治体は事業計画策定作業を進めている。一方、介護事業者側は、介護報酬の改定を含む制度改定の方向を見据え次年度以降の介護事業戦略の再構築作業に取組んでいる最中である。特に大手介護事業者等は、保険給付外事業の開発を通して、介護報酬に大きく依存している現在の事業構造を強化することが喫緊の課題となっている。本稿では、保険給付外事業のうち「混合介護市場」(すなわち、「保険給付外サービスと保険給付サービスを合わせて利用する高齢者介護市場」)に焦点をあてて、その分野の種類や市場成長にあたっての課題、可能性について整理を行なう。
今回の介護保険制度改定以降、次々回(2012年)の介護保険制度改定にかけて大きな争点となるテーマに、(1)保険給付を中・重度要介護者に対象限定すること、(2)介護サービス利用の2階建て化の推進の2つのテーマがある。(2)は、介護保険法定給付サービスの利用(1階)、介護保険給付外サービスの利用(2階)の2層構造の構築推進である(注1)。ちょうど、老後の生計の備えとしての公的年金保険と私的年金保険、自動車事故の備えとしての自賠責保険と任意保険の2層構造と同様の構造を目指すものである。
現在のところ、大手介護企業が事業化に取組んでいる「介護保険給付外サービス」の実際の新商品の内容をみると、「保険給付サービスの利用高齢者の配偶者を含む家族向けの生活支援サービス市場」、「その他一般向けの介護サービスや生活支援サービス市場」向けのサービス商品が主力となっており、「保険給付サービスの利用高齢者向けの保険外介護サービス市場」向けのサービス商品はまだ多くない。この市場の開発が決して容易ではないことが現在の企業の取組動向から伺われる(注2)。
実は、「混合介護市場」の開発普及が容易ではないのは、介護保険制度スタート当時の状況からみて当然とも言える。公的介護保険の発足当時、同居家族向けのサービス利用その他不適切な保険給付事例が全国に多数発生し、国や保険者たる区市町村はその防止徹底に追われた。以降、給付外サービスの利用については介護保険制度上、積極的な利用推奨の対象となって来なかった。厚生労働省平成15年3月19日老計発第0319001号・老振発第0319001号「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」によれば、保険給付を利用している高齢者が保険給付以外のサービスの利用を希望する場合は、担当しているホームヘルパーはケアマネジャーや区市町村に連絡をし、ケアマネジャーや区市町村は、まずは、自治体の実施する生活支援ヘルパーサービスや配食サービス等の生活支援サービスやNPO法人等による参加型福祉サービスやボランティアを利用するよう、本人に対してアドバイスすることとなっている。保険外サービスは、これらの互助活動の援助が得られない場合に限って、介護事業者が提供することが可能としている。
「混合介護市場」の開発普及が容易ではない要因として、利用者側の要因もある。保険から給付可能な限度額を超えて利用する分に対して全額自費で支払うことに対して、利用者の拒否感が強いため、値引きをせざるをえないと判断し対応している事業者が多い。そのためこれまでは、積極的にこの保険外介護市場を開発しようという事業者のインセンティブが働きにくい。
混合介護市場における保険給付外サービスは大別すると「上乗せ」「横出し」に整理できる。「上乗せ」は、各利用者の区分支給限度額内で可能な利用枠を超えたサービス、「横出し」は、当該介護サービスの種類とは異なるサービス、例えば訪問介護サービスでいえば、「上乗せサービス」は利用限度額上限を超える回数利用や時間延長利用、「横出しサービス」は、冠婚葬祭その他日常的な外出行動に関する付き添いサービス等がある。
今後、保険給付のカバー領域は、冒頭に延べた中・重度要介護者向けにシフトすることの他、現行の滞在型サービス給付から短時間の巡回型サービス中心に、さらに、身体介護サービスにシフトすることが必至な情勢である。この点からみると、保険給付の他に多様なニーズに対応する保険外サービスを利用しながら、自立した地域生活を継続していくという生活スタイルの確立と普及、混合介護市場の成長は社会的に要請されているテーマでもある。また、家族による援助ネットワークを持たないひとりぐらし高齢者や高齢者夫婦世帯の増加は、家族向け生活支援サービス市場や混合介護市場の成長の追い風である。介護事業者各社の在宅高齢者の多様な生活ニーズを的確に掘り起こし在宅生活の質の確保と向上に貢献する付加価値の高い介護サービスや生活支援サービス商品の開発が期待される。
(注2)だからこそ、わが国では介護保険市場における混合介護市場の成長が急がれるとも言える。介護保険設計にあたり広く参考にしたドイツの制度とは違って、わが国の場合、被保険者の身体介護サービスから家事支援・生活支援サービスを広く保険給付する制度を構築してスタートした。近年の社会保障財政を取り巻く国政状況からみて、保険給付対象範囲の再規定と自費市場に対する国民意識の適応をはかっていくことは、互助活動システムの成熟化をはかることと共に避けられないテーマであると考える。