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サーチ・ナウ
2008.11.25 新たな経済指標の動きとこれからの着眼点
わが国の経済構造は、バブル経済期以後に大きく変容した。「実感なき」の形容が度々冠された02年1月からの景気回復期の経済指標にも、それに呼応する動きがみられる。本稿は、この景気回復期の特徴を簡潔に振り返った後、時点をやや遡って90年代後半以降における経済指標の拡充について述べる。それらを踏まえて、景気の先行きを読もうとする際に、これから重要になると思われる経済指標への着眼点を例示する。
1.経済指標でみる「実感なき」景気回復期の特徴
「実感なき」景気回復期の経済指標は、90年代の構造変化の結果を色濃く反映している。その中でも重要と思われる現象として、ここでは次の2つを挙げる。
・製造・生産関連は好調でも、家計・消費関連は伸びなかった。(両者の相関の低下)
・各地域経済の回復の程度に、大きな差が生じた。
前者は、例えば鉱工業生産指数(IIP)と商業販売額(小売業)の02年以前と以後の推移を比較すれば、一目瞭然である(図1参照)。後者も、例えば内閣府『地域経済動向』の「地域別景況インデックス」に端的に表れている(※1)。
2.90年代後半以降における経済指標の拡充
90年代における経済の急激な構造変化により、特に後半以降は、かつて「IIPを見れば日本経済全体の動きがわかる」とも評された状況は消えている。それは前項で述べた経済指標の動きにも表れている。この背景として、ここではとりわけ、80〜91年度は23〜24%で推移していたわが国の製造業就業者の全就業者に占める割合が、その後地域差も伴いながら低下を続け、98年度には20%を割り込み、03年度には18%を割り込んだことを指摘したい(※2)。そこで、そうした変化に対応すべく、経済指標に対する次のような要望が喫緊となった。
・家計・消費関連を含む第3次産業に関する経済指標の拡充
・産業間、分野間のバランスが取れた総合的な経済指標の信頼性向上
・各地域の経済動向をなるべく早期に把握できる地域経済指標の拡充
実際、製造・生産関連と比べて貧弱であった第3次産業関連の統計やサーベイ調査は、拡充が図られた(※3)。総合的な経済指標である内閣府『景気動向指数』は、本年4月分よりDI中心からCI中心に移行された。CIからは景気の変化の方向性のみならず、弱い回復・力強い回復といった量感の情報も得られるため、指数と「実感」との間のすり合わせも期待される。また、総合指標も含めた地域の経済指標に関しても、準備が進められている。
3.これからの経済指標への着眼点――『景気ウォッチャー調査』を例に
経済構造が変化した中、拡充された経済指標も利用して、日本経済及び地域経済の現状や先行きをどのように的確に読むかが課題のひとつとなっている。そこで、ここでは家計・消費関連の先行きに対するアプローチについて例示する。
製造・生産関連では、大手企業の生産計画があり、在庫の状況も把握できる。そのため、生産や出荷に至る以前の段階での変化を一応察知することができ、在庫循環図といった分析手法もある。家計・消費関連でも、売上に表れる以前の動きを感知できないだろうか。
00年1月から開始された景気ウォッチャー調査には、その可能性が潜んでいる。同調査は、全国を11地域に分け、小売業やサービス業等の勤務先で働く2,050人(うち約7割が家計関連)を対象にしたサーベイ調査である。景気の現状や先行きが質問され、その理由にはコメントが付される。コメントを読むと、消費者の細かな行動の変化が判断理由になっている場合が多いことに気付くはずである。例えば、メモ持参で買い物する客が増えれば、売上は横ばいでも景気は弱含みと判断されることがある。そのため、景気ウォッチャー現状判断DIは、他の家計・消費関連指標より先行して変化する傾向がある。
それだけでなく、景気ウォッチャー現状判断DIは、図2が示すように、景気動向指数の先行CIとの相関が驚くほど高い(※4)。これは、同調査の速報性(当該月分は翌月第6営業日に公表)と併せて、同調査の有用性を一層高めている。
経済構造の変化の中で誕生した新しい経済指標は、データの蓄積が進み、吟味に耐えられるようになりつつある。これらの経済指標に隠された性質は興味深く、そこからさらに新たな利用の視点が次々と生まれてくることが、大いに期待されている。
※1 内閣府『地域経済動向』(http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei.html)参照。
※2 数字は内閣府『国民経済計算』参照。また、現実の経済においても、「作れば(国内で)売れた時代」と比べて、メーカーより流通が優位になるなどの変化が生じている。
※3 例えば、経済産業省『第3次産業活動指数』、総務省『家計消費状況調査』、内閣府『消費総合指数』『消費動向調査』『景気ウォッチャー調査』の月次化や新設が行われた。
※4 両者の相関係数(景気ウォッチャー現状判断DIが2か月先行)を計算すると、約0.9である。ただし、東証株価指数などの金融関連指標は、同DIよりも総じて先行している。
