ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > 消費者による支払・決済サービスへの規制について

サーチ・ナウ

2008.12.08 消費者による支払・決済サービスへの規制について

(議論の収束に向けての考察)
産業研究室 主任研究員 田渕 文美

 昨今、送金・振込等、消費者向けの支払・決済サービスに関する議論が盛んに行われてきた。金融庁「決済に関するワーキンググループ」や、経済産業省産業構造審議会「商取引の支払に関する小委員会」では、現在多くの消費者が何気なく、しかし便利に使っているコンビニでの収納代行や宅配便の代引サービス、電子マネー、マイレージを初めとするポイントサービス等に、政府による規制が必要かという検討が行われている。
 これらの支払・決済サービスは、その利便性やコストが収納事業者・支払者双方の支持を得て、取扱規模を拡大させてきた。例えば、コンビニでの収納代行サービスは、1987年にセブンイレブンが東京電力と始めたものであるが、現在では公共料金だけでなく、大小何万もの民間企業や地方自治体など公共機関の集金業務を代行し、その取扱額は中小の金融機関の内国為替取扱額を超える規模にまでなっている。これらのサービスは、少額の支払について、いかに効率良く・便利に行うかという関係者のニーズから言わば自然発生的に成立してきたビジネスモデルであり、そのためにサービスの内容や非常時の責任分担については当事者間の契約のみに基づいており、消費者保護などに関する法律面での整備は、後追いにならざるを得なかったものである。
 一方で、支払・決済サービスは、為替や送金という金融業の根幹をなすサービスとの類似性を有するがゆえに、金融監督の観点から規制の必要性についての議論がなされている。為替・送金は、日本では銀行しか出来ない業務であるが、その定義は明確ではなく、そのため今さらのように定義に関する議論で紛糾するのである。しかしこれは日本だけではなく、海外諸国でも為替が定義されていないことは多い。ただ定義が無いままで立ち行かなくなるのは時の流れで、欧州においては、単一ユーロ支払地域(SEPA)の動きの中で、支払サービス指令(注1)において、送金なるものが明確に定義されている。
 上記の委員会等では、近い内に方向性が示される予定であるが、今回の支払・決済サービスに関する議論の収束に向けてのコメントをいくつか挙げておきたい。
 まずは、今回の議論の過程でサービスの実態についての把握がかなりなされた結果、自然発生的なビジネスにも関わらず、業界による自主的な取組によりサービスの適正化が図られており、実際に消費者へのリスクがあまり発生していないことがわかったという点である(注2)。例えば、コンビニ店頭での収納代行では、コンビニ業界の自主ルールが実質的に機能していることから、消費者へのリスクはほとんど無く、また、宅配便業者による代引サービスについても、大手の運送会社を中心に、業界としての自主ルール化を進めている。ただし、宅配サービスにおいて現状の提供事業者が継続的な取引を前提として収納事業者の管理・選別を行い、不正請求のリスクが限定的なものになっているものの、スポット利用が可能で、消費者が誰でも収納依頼ができるサービスモデルの場合には、収納したい者にとって使いやすい一方で支払者にとってのリスクが増大すると考えられるため、ある程度の規制は必要であろう。
 次に、部分的でも規制を導入する場合には、規制影響評価をしっかり行う必要がある。規制の導入によって、実際に関係企業のコスト負担がどれくらい重くなり、それがどれほど消費者価格に転嫁されるのか、あるいはサービスとして存続しなくなるほどの負担になるのか等の影響評価が、事前に公表され、広く意見が求められるべきである。
 また、今回の議論においては、利用者の責任や義務という視点がやや不足していたように思われる。利用者への啓蒙をどう行うか、注意をどう喚起するかといったことに加え、利用者が負担すべきリスクや責任についての議論も必要である。消費者保護も行き過ぎれば、結果的にその付けは消費者に回ってくることから、この事実に理解を得て、妥当な水準での保護を目指すべきなのではないか。
 消費者をめぐる決済等の取引については、今後は、金融庁、経済産業省だけでなく、消費者庁も関与してくるのであろうが、規制のあり方は、利用者保護と産業振興のバランスがとれたものであるべきであり、そのため関係省庁は双方への影響を適正に評価した上で方向性を決めるべきであろう。

(注1)詳細は、拙稿「欧州における支払サービス指令への取組みからの示唆」金融法務事情2008.9.25号をご参照
(注2)詳細は、拙稿「わが国における"少額代金支払サービス"の現状と課題」月刊消費者信用2008年8月号をご参照

ホームこのページの先頭へ