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サーチ・ナウ
2009.03.23 公共経営も「レバレッジ」の時代?
■今年1月、米国のブッシュ前大統領が、その8年間の政権運営を終えました。内政・外交の両面にて厳しい総括がなされているブッシュ氏ですが、連邦政府内のマネジメント(及び行政改革)の能力の点では定評があったことは、わが国では(そして恐らく米国の一般国民にも)ほとんど知られていません。歴代大統領の中で群を抜くマネジメント能力ともいわれており、民主党の政治家からもその点に関しては、高い評価を得ていました。
■そのブッシュ政権の(そして前任であったクリントン民主党政権の)政権運営は、「新公共経営」(ニュー・パブリック・マネジメント、NPM)が原則であったことが知られています。これは、民間企業の経営手法に範を得たもので、「市場メカニズムの活用」「顧客主義」「業績(成果)による統制」「ヒエラルキーの簡素化」などがその特徴とされています。ブッシュ前大統領の評価が高かったのも、民間企業の経営者であった同氏が、閣僚を強く巻き込んで連邦各省の経営を成果主義に転換させていったことにあるといえます。閣議の場で各省の業績を厳しく問い詰めた、とも言われています。
■そのような新公共経営ですが、そろそろ転期を迎えつつあるのかも知れません。
■米国ペンシルバニア大学のドナルド・ケトル(Donald F. Kettl)教授は、その近著『次代の米国連邦政府(Next Government of the United States)』(W. W. Norton, 2009)の中で、「梃子(レバレッジ)によるガバナンス(leveraged governance)」が、新公共経営に代わる原則になるのでは、と指摘しています。同教授は、9/11やハリケーン・カトリナなどに対して政府が必ずしも有効な対応策をとれなかったところに、今の公共経営の在り方が変わるべき要素を見出したようです。同書には、「なぜ我々の政府機関は使い物にならないのか。どうすれば修理できるのか。(Why Our Institutions Fails Us and How to Fix Them)」という過激な副題がつけられています。
■このところ色々な分野で「梃子(レバレッジ)」が流行っているようですが、ここでは、小さな力を大きな力に変える、もしくは、影響力を持つ(国民に真に成果をもたらす)といった意味だと思われます。より具体的にこの新しい原則の鍵は、政府機関の縦・横のカベ、及び官民のカベを超えた縦横無尽の『連携』により、真の成果を生み出して国民に提供すること、だと考えられます。社会全体がネットワーク化していることを踏まえて、公的機関の経営も「ネットワーク型」になっていく、との解釈も成り立ちそうです。
■新公共経営がこの原則に完全にとって代わられることはないにしても、またこの考えが真に新しい「原則」たりうるのかについて未知の部分が多いものの、現在の新公共経営の不足部分に光を当てて、今後の公共経営の在り方に重要な視点を投げかけていることは確かでしょう。
■その一方で、(1)「官民協働(PPP)」「コラボレーション」は新公共経営の下ですでに浸透している考え方ですので、それと「梃子(レバレッジ)」理論は違うものか、また、(2)複数主体の連携では成果を生み出し責任を果たす仕組みが複雑になってしまうことを踏まえ、それが実務上で機能しうるのか、など検証されるべき点もまだ多いと思います。
■まずは、変化を旗印に登場したオバマ新政権がどのような政権運営を見せるのか、そこに「梃子(レバレッジ)」の要素がどう見出せるのか、に着目することが重要となりそうです。