ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > 「百年に一度の危機」は何故予見されなかったのか
サーチ・ナウ
2009.04.06 「百年に一度の危機」は何故予見されなかったのか
よく言われる「百年に一度の危機」は、サブプライ問題が引き金となり、昨年9月米国大手証券会社リーマン・ブラザーズが破綻した事が発端だと言われる。この金融危機が実体経済に悪影響を与え、2008年10〜12月期の我が国の実質国内総生産は対前期比3.3%減、年率換算でマイナス12.7%となり、経済成長率は記録的な悪化となった。新聞やテレビで経済不況や雇用不安を取り上げない日はないと言っても良いだろう。ところで、情報化社会の今日、何故サブプライムローン問題が世界同時不況を引き起こすことになると予測出来なかったのだろうか。筆者には不思議でたまらない。そこで、サブプライム問題の登場から深刻化へのプロセスを振り返ってみよう。
私の手元で確認する限りでは、新聞は早くも2006年12月段階で米国にはサブプライムローンという低所得者向け住宅ローンが存在することを紹介し、この住宅ローンの焦げ付きが増加してきたと伝えている。2007年2月には、サブプライムローンの焦げ付きからドルが売られ軟化しはじめる。同年4月には当時の専業最大手ニューセンチュリー・ファイナンシャルが破綻している。
住宅ローンの焦げ付き増加によって金融機関関連株の株価下落、格付けの引き下げが生じる。一方、一部の米国金融機関はローン債券の売却等素早い対応を見せる。しかし、事態は予想以上のスピードと範囲で進行していくことになることを読者はご存じであろう。2007年の夏には、米国でサブプライムローンの焦げ付きが大きな問題となった。当時、信用リスク不安から、高リスク金融商品への投資が急減し、資金調達が困難となった。さらに、米国の信用不安は欧州へと伝播する。いわゆる仏BNPパリバの「パリバショック」、英国中堅銀行ノーザン・ロックの取り付け騒ぎが発生する。
米国政府はFF金利の引き下げや債務者救済措置を打ち出し、債務者と金融機関の救済を試みるが十分ではなかった。2007年にFRB議長は金融機関の損失額を1,000億ドルと議会で証言したが、2008年には米国財務省は同損失額を2,000億ドルと発表している。この間損失額は大きく増加するが、今から振り返ると桁違いの楽観論であった。しかし、政府関係者による発表は常にバイアスがかかっていると言っても良いだろう。一方、新聞報道によれば、初期の段階から米国の金融市場関係者やエコノミストがサブプライムローン問題の大きさを指摘していると伝えている。マスコミが伝える「市場の声」は正しかったと言える。
それでは、日本のエコノミストはこの問題をどう捉えたのだろうか。リーマンショック直前の民間調査機関の経済見通しを比較すると(注1)、日本経済の実質GDP成長率の予測値は最高で1.2%、最低0.3%であった。同じく米国の成長率予測は、最高で2.3%、最低で0.6%であった。リーマンショック直前で、全く事態を予測しない楽観的な見通しである。一方で、一部のエコノミストは、いち早く今回の事態を予見しているように見える 。机上の空理空論ではなく「市場の声」に耳を傾けることが、経済分析に必要なのではないかと改めて考えさせられる。