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サーチ・ナウ

2009.05.01 クリエイティブ・ツーリズムによる地域振興

経済社会政策部 主任研究員 太下 義之

 "Creative Tourism"とは、日本ではまだほとんど紹介されていないが、最近になり、文化的な観光の一形態として人気を博している。
 これは、クリスピン・レイモンド(Crispin Raymond;ニュージーランドの観光コンサルタント)とグレッグ・リチャーズ(Greg Richards;世界観光機関(UNWTO)コンサルタント)の両氏によって命名された概念であり、次のように定義してよいだろう(注1)。
 すなわち、旅先の都市・地域の文化や自然の特性について、従来型な観光旅行よりもクリエイティブな方法(例えば、アートを通じた双方向型のワークショップや肩肘張らない体験学習など)を通じて自発的かつ濃密な、自分だけのかけがいのない体験をすること、これがCreative Tourismである。
 このようなCreative Tourismの概念は、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)でも重視されており、UNESCO ではCreative Cities Network(注2)を通してCreative Tourismに関する理解促進と普及振興に取り組んでいる。
 例えば、Creative Cities Networkのメンバー都市であるサンタフェ(米国・ニューメキシコ州の州都)では、2008年9月28日から10月2日の5日間、Creative Tourismをテーマとした初めての国際会議「サンタフェ国際クリエイティブ・ツーリズム会議2008」(注3)が開催された。
 同会議には、世界16ヶ国の代表が参加して、Creative Tourismに関するベスト・プラクティスを学び合った。そして同会議においては、開催都市であるサンタフェに関する創造的体験のプレゼンテーションが50以上も実施された。
 また、Creative Tourismの発案者の一人がニュージーランドの観光コンサルタントだということもあり、同国もCreative Tourismを積極的に展開している。そして、創造的な観光を推進していくために、Creative Tourism New Zealand(以下、CTNZ)という団体も組成されている(注4)。このCTNZでは、フェルトワーク(羊毛による作品づくり)、マオリ族の工芸品であるボーン・カーヴィング(羊の骨の彫刻)等、バラエティに富んだクリエイティブな体験に関する情報を旅行者に提供している。
 一方、日本においては、2008年10月に金沢市で開催された「世界創造都市フォーラム2008」(注5)において、シンポジウムのパネリストとして出席したサンタフェ市議会議員(文化担当)のRebecca Wurzburger氏によって、Creative Tourismという概念が初めて紹介された。
 金沢市において日本初で紹介されたという経緯もあり、同市ではこのCreative Tourismに対して、全国の自治体に先駆けて取り組むことを決定しており、クラフト分野を対象とした、魅力ある金沢の観光モデルコースを世界に情報発信するための事業「金沢版『クリエイティブ・ツーリズム』」を2009年度に実施予定である。
 ところで、そもそも観光の歴史を紐解いてみると、ヨーロッパの貴族の子弟が文化・教育的な体験のために旅行(観光)するという、いわゆる「グランド・ツアー」に起源を遡ることができるが、今日的な視点でこの「グランド・ツアー」を捉え直すと、それはまさしくCreative Tourismであった、とみなすことができよう。
 全国の都市・地域においても、経済及びコミュニティ、そして文化の各分野での持続的発展を図るため、上述したように、古くて新しい概念であるCreative Tourismをキーワードとして、斬新な視点から地域振興に取り組んでみてはいかがであろうか。


(注1)フリー百科事典『Wikipedia(英語版)』の"Tourism"の項目等を参考に筆者が定義
(注2)芸術文化に関する世界水準での経験知識や専門技術を有する都市に対して、UNESCOが「クリエイティブ・シティ」という"称号"を与えている。こうした都市のネットワークが"Creative Cities Network"。
(注3)<http://www.santafecreativetourism.org/>
(注4)<http://www.creativetourism.co.nz/index.html>
(注5)同会議の開催記録<http://www.ur-plaza.osaka-cu.ac.jp/symposium/forum081017.pdf>

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