ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > サーチ・ナウ:農商工連携の展望と植物工場新時代

サーチ・ナウ

2009.05.18 サーチ・ナウ:農商工連携の展望と植物工場新時代

研究開発第2部(名古屋) 主任研究員 鶴田哲也

 2006年4月の地域団体商標制度の創設を契機に各地で巻き起こった「地域ブランド」ブームであるが、その目標が地域団体商標の登録査定という一点に矮小化されてしまったケースも多く、現在では取り組みに温度差が生じているようである。圧倒的な知名度とブランド価値を持つ産品も、地域で細々と消費されてきた産品も地域団体商標制度の枠内では同列に扱われてしまうが、当然ブランド価値は同等ではない。商品開発戦略(売れる商品をどうつくるか)と販売戦略(どうやって売るか)を含めての地域ブランド戦略であることを、立ち止まっている地域の関係者各位には今一度お考えいただきたい。
 一方、2008年7月に施行された農商工等連携促進法は、施行後半年で同法に基づく事業計画172件が国の認定を受けるなど、注目も高く順調な立ち上がりとなっているように見受けられる。先行する中小企業地域資源活用促進法などと重なる部分もあるが、生産・商品開発・販売の各分野にわたる異業種連携を条件とし、商品を作って売るためのスキームが予め確保されていることから事業化への期待は大きいと言える。近年、輸入食材・加工食品の安全性が大きな話題となり、食の安全への関心が高まったことも追い風となっている。
 ただし、公表資料を見る限りでは、認定された事業計画の中には生産者と加工事業者のみによる計画も含まれており、販売戦略・計画が不透明なものや、需給動向を無視した価格・販売量を想定していると見受けられるものもある。開発に資金を投じる前に、市場の精査を考慮すべきであろう。
 農商工連携に関しては、注目すべき動きもある。本年3月の経済財政諮問会議で石破農水相は農業・農村の潜在力を活用した「緑と水の環境技術革命プロジェクト」を提言し、これにより6兆円規模の産業創出が可能としている(*1)。これは国内農業産出額が8.5兆円程度であることを考慮すれば相当の規模と言える。
 同プロジェクトは複数のプログラムより構成されているが、その中の一つに遺伝子組み換えカイコの絹糸を用いた人工血管や、花粉症を抑制するコメの開発などからなる「アグリヘルス産業開拓プロジェクト」がある。その実現手段として期待されているのがLED等の人工光を用いた完全制御型植物工場である。
 完全制御型植物工場では無菌・無農薬環境下での植物栽培が可能であり、また青色LEDなどを育成に用いることで植物内の有用成分が増加する効果も確認されているなど、「アグリヘルス」の推進に多大な効果が期待される。遊休工場や物流施設、空きオフィスなどの転用も可能であることから、既に国内では異業種からの参入を含む民間事業者を中心に50ヶ所程度が稼動しているが、政府では更なる普及拡大を目指し、経産省と農水省が共同で設置運営している農商工連携研究会内に植物工場ワーキンググループを設置し、本年1月より支援策や制度課題等についての検討を進めている。
 同WGの座長を務める高辻正基・日本農業大学客員教授と筆者とは、筆者が運営に関わる某研究会で接点があり日頃指導を受けているが、高辻氏は以前より、稼動していない工場や誘致が進まない産業用地などを「休耕地」と捉えた植物工場への転用促進施策の展開を提言している。例えば農地に近い優遇税制の導入、建築基準法・消防法の例外規定、初期投資への支援、電気料金の優遇制度などである。これらの一部は同ワーキンググループの提言にも盛り込まれており(*2)、国が既に予算化している普及・拡大のための施策(販路拡大や生産技術開発等への支援)に加え、同提言を踏まえた制度検討も今後は行われることであろう。
 自治体レベルでも独自の支援制度を整えることで、操業環境が悪化している業種・企業の選択肢を増やし、地域に新たな産業を生み出す契機となる可能性もある。既に青森県では「植物工場推進特区」の創設・認定に向けた検討が進められていると聞く。考慮すべき動きと言えるだろう。

*1 経済財政諮問会議(平成21年第6回)説明資料「農業・農村の潜在力を活かした新たな挑戦(石破臨時議員提出資料)」平成21年3月10日
*2 「農商工連携研究会 植物工場ワーキンググループ報告書」2009年4月24日公表

ホームこのページの先頭へ