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サーチ・ナウ

2009.07.27 「改定:災害に係る住家の被害認定基準運用指針」

公共経営・地域政策部 主任研究員 瀬川 祥子

■災害に係る住家の被害認定基準とは?
 災害に係る住家の被害認定基準(以下、「被害認定基準」とする)とは、もともとは各省庁が災害規模を把握するため、昭和43年に統一基準として定めたものである。
 この「被害認定基準」について、住民にとっても重要性が高まったのは、阪神・淡路大震災以降である。阪神・淡路大震災において、被災者支援のため各種制度等が創設され、その運用のために被災の有無や程度を判断する必要が生じた。しかし、阪神・淡路大震災の時点では被害程度を判断する基準が存在していなかったため、個別の支援制度において基準を定めたほか、自治体独自の判断による対応となった。その結果、支援制度ごとに基準が異なるため同一世帯を何度も調査する必要が生じ、迅速な復旧を目指す自治体に大きな負担がかかること、自治体によって判断基準が大きく異なると住民に不公平感が生じることが反省点として指摘され、統一的な基準の必要性が高まった。そこで、被災者支援制度の大きな柱として創設された「被災者生活再建支援法」では、被災者への支援は、「市町村が発行する『り災証明』に基づくこと」が定められ、省庁統一基準であった「被害認定基準」は、この「り災証明」発行のために活用されている。

■「被害認定基準」を取り巻く変化と平成21年度の改定
 「被災者生活再建支援法」は、平成16年と平成19年に改正され、大幅な制度拡充がなされた。その結果、例えば、「り災証明」で「全壊」とされた世帯は100万円、「大規模半壊」であれば50万円の支給(基礎支援金)を受けることができる。一方で、「半壊」未満と判定されると多くの支援制度の対象外となる。そのため、被災者の認定結果や判定方法に対する関心が高まった。
 一方、「被害認定基準」は昭和43年に策定後、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、平成13年に、その運用指針が策定された。しかし、運用指針策定後、平成16年新潟豪雨、兵庫台風23号といった豪雨や台風による被害、平成18年佐呂間町竜巻災害、延岡竜巻災害といった竜巻による被害など、平成13年時点にはあまり注目されていなかった災害で多くの被害が発生した。
 そこで、こうした被害の発生や、住民の「被害認定基準」に対する関心の高まり受け、平成21年6月、運用指針の改定が行われた。主な変更点として、運用指針の構成について被害の種類別の2編構成から、災害種類別に「地震」「水害」「風害」という3編構成となった。また、台風や竜巻の被害実態、平成13年度以降に発生した地震被害の実態を踏まえ、床下への汚泥堆積、飛来物による損害、断熱材吸水を復旧するための壁の一部取り外し、地盤被害による基礎の著しい損傷など、従来は例示として記載のなかった損傷が追加された。

図1 運用指針の構成の変化

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資料)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」「災害に係る住家の被害認定基準運用指針(平成21年6月改定)」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

 さらに過去の災害時の実態を踏まえて調査フローが再定義された。従来の運用指針では、「第1次判定」「第2次判定」「第3次判定」等という調査フローであった。しかし、実態上、「第1次判定」と「第2次判定」は同時に行われ外観からの調査となるため、両方を併せ「外観目視調査」とよばれることが多かった。また、「第3次判定」は、住家内部にも立ち入るため「内部立入調査」とよばれるほか、「第2次判定」終了後に被災者の申請に基づき実施されるため「再調査」とよばれることもあり、「第3次判定」に不服があるため行われる「再調査」との混同が生じていた。そこで、新たな運用指針では、災害毎に「第1次調査」「第2次調査」「不服申立て」といった調査フローが示された。災害で住家に被害を受けた被災者の精神的なダメージは大きく、可能な限り何度でも詳細に被害を調査して欲しいといった意向も発生する中、公正な災害復興を円滑に推進するための帰着点が明示されたといえる。

改定された運用指針における地震の調査フロー

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資料)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」「災害に係る住家の被害認定基準運用指針(平成21年6月改定)」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

その他、具体的な変更点は以下の内閣府防災担当のHPをご参照頂きたい。
<災害に係る住家の被害認定基準運用指針(平成21年6月改定)>
http://www.bousai.go.jp/hou/unyou.html
<運用指針改定の内容>
http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/shishin_kossi.pdf


■依然残る被害認定の課題
 今回の改定後も残る課題もある。大きな課題として、被害認定調査にかかる自治体の負荷があげられる。被災者にしてみれば、どのような支援を受けられるかが決まる調査であり、できるだけ丁寧にわずかな被害も見落としなく判定して欲しいと考えることは当然である。一方で、何万棟、何十万棟といった調査が必要となるような大規模災害に見舞われた自治体にとっては、迅速な復興が求められる中で大量な被害認定調査の実施を要求されることが過大な負担を招いている。
 この課題解決に向け、今回の運用指針改定後も、分かりやすく使いやすい調査票の作成など、自治体の迅速で的確な調査実施を支援するための検討が引き続き行われる予定となっている。
 とはいえ、自治体が円滑に被害認定調査を推進できるかどうかは、平素、被害認定調査の体制を想定して整備し、講習会の実施など災害に備えた準備を行ってきたかどうかによるところが大きい。しかし、現状では、地域防災計画に被害認定調査の担当部署が位置づけられていない自治体が多数あるなど、備えが万全であるとは言い難い。
 自治体が、被害認定調査について、災害時にどのような対応が必要となるかを検討するための資料としては、平成19年に内閣府より「大規模災害時における住家被害認定業務の実施体制整備のあり方について−事例と例示−」が示されている。本資料は、大規模災害時に、自治体が直面する事柄について事例を踏まえて記載されている。今回の改定前の内容にはなるものの、体制として事前に検討すべき事項についての大きな変更はなく、現時点においても十分、有用であると考える。
 災害は、いつ、どの自治体で発生するかわからないものである。全ての自治体で、大規模災害がおこった際の住家の被害認定調査の対応方法、体制について、平時からの検討が進むことを期待する。

<大規模災害時における住家被害認定業務の実施体制整備のあり方について−事例と例示−>
http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/080520_01.pdf

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