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サーチ・ナウ

2009.09.07 公営住宅制度の「進化」

政策研究事業本部(大阪) 主席研究員 伊坂 善明

 住宅のセーフティネットの代表として地方自治体が提供する公営住宅がある。特に、高度経済成長の時期に、地方から都市への大量の人口流入の受け皿となった公営住宅は、この時期に大量に建設されている。そのため、ほとんどの大都市自治体では昭和30年代から40年代の公営住宅の数が最も多く、建設からすでに50年程度が経過しているため老朽化も進み、地震に対する耐震性の問題もはらんでいることから、その更新が迫られているところである。ところが、地方自治体の多くは、深刻な財政難で、建替えのための予算を確保するのも容易ではない。
 そんな中で、平成8年の公営住宅法の改正において、それまでの公営住宅の供給方式である直接建設方式に加え、民間住宅を一定期間、公営住宅として借り上げる供給方式(借上げ公営住宅制度)が導入された。この民間住宅の借上げによる公営住宅の供給方式は、(1)土地の取得費や建設費などを投じなくても公営住宅を供給できる、(2)既存の公営住宅の立地の偏在を解消するような供給が可能、(3)期間を区切った借上げにより、地域の需給動向にあわせた供給量の調整が行いやすい など、直接建設方式にないメリットがある。
 この方式は、借上げ公営住宅を建設する民間事業者を募集し、その民間事業者が建設した住宅を一棟一括して、長期間(例:20年)借り上げる方式が中心となっていたが、この制度のメリットをより発揮しやすくするため、今回、新築でない既存の民間住宅を一戸単位で借り上げることができるよう、制度を拡充することを国土交通省で検討されている。弊社では、昨年度、そのガイドラインの策定のお手伝いをさせていただいた。その中で、いくつかの自治体の意見を聞く機会があった。共通して指摘のあった点を整理すると(1)財政難の中で、新たに公営住宅の管理戸数を増やす選択は行いにくいこと、(2)民間住宅を一戸単位で借り上げることの管理の非効率性(事務作業の増大)への懸念、(3)既入居者との家賃上のアンバランスの発生とコミュニティ形成上の懸念 など、多くの実務上の課題が指摘された。一方で、既存の老朽公営住宅の建替えを迫られている中で、建替えに代わる手法として活用していくことについて、多くの自治体で前向きの意見があった。つまり、老朽化した公営住宅の入居者には、既存の民間の賃貸住宅の一部を借り上げて、そこに移り住んでもらい、そのことで建替えを行わずに済ませるという方式である。深刻な財政難の中での自治体の知恵と言える。
 昨年の秋以降の世界的経済危機の影響で、住宅のセーフティネットを求める声が、高まりつつあるように感じる。そんな中で、こうした公営住宅の「進化」の取組に、多くの自治体や住民の理解が得られるように期待したいところである。

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