ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > 『消費者庁時代』に何が変わるか?
サーチ・ナウ
2009.10.05 『消費者庁時代』に何が変わるか?
2009年9月1日に、消費者行政を一元化するための「消費庁」が設置された。
新たな『消費者庁時代』を迎えるにあたり、本稿では、消費者庁の役割や特徴を改めて概観し、今後予想される社会環境の変化や影響を推察し、それに伴う事業者側の取り組み姿勢などについて考えてみたいと思う。
◇消費者庁の役割・特徴 〜 消費者行政「3つの一元化」
消費者庁設置の最大の意義は、これまで縦割りでなされていた消費者行政が、消費者視点からの横割り行政に再編されたことである。いわゆる「消費者行政の一元化」であるが、具体的には、以下の3つの機能が一元化されたと考えてよい。
一つめは「消費者政策・規制の一元化」である。消費者庁には、消費者行政全般を監視するための調整権や勧告権が付与され、施策の企画立案や各種法律の所管・共管がなされる。二つめが「消費者情報の一元化」であり、消費生活センターをはじめ、警察や病院、企業や従業員からの情報も一元的に集約し、分析をすることが可能となっている。三つめが「消費者相談窓口の一元化」である。全国各地の消費者相談窓口の全国ネットワークが構築され、消費者からの各種相談に常時対応できる体制が構築される。
◇何が変わるのか 〜 直近の変化と影響
ところで、消費者庁の設置は、我々国民の生活や企業の事業活動にどのような変化を及ぼすのか。
実は、当面の大きな変化は見あたらない。なぜならば、関係する法律そのものは変化せず、各省から消費者庁に移管もしくは共管がなされるだけであるからである。唯一、消費者安全法により、既存の法律や省庁所管でカバーされない隙間的な事案については、消費者庁に独自の権限が与えられるため、適切な対応がなされることになるだろう。
それでは、少し先の影響を考えてみたい。
先に述べた、相談窓口の一元化、情報の一元化によって、消費者からの相談アクセスは著しく改善されるとともに、関係各所に散在する情報も一挙に集約される。これはつまり、これまで表出しなかった消費者情報を吸い上げることが可能になるとともに、情報の全体把握・分析が可能となったことを意味する。行政は、これらの情報に基づき、対応の優先順位を付け、効果的な対応を施すことが可能となる。その結果、新たな法整備や執行もなされる可能性は高い(※)。
また、集約・分析された情報は、当然、我々消費者も知ることが可能となり、我々はその情報に基づいて、製品やサービスを選別し、消費行動を行うことになるだろう。
◇何をすべきなのか 〜消費者と事業者、WIN-WINの関係構築が必要
このような消費者重視の社会環境の変化は、事業者サイドからみれば不利な変化と捉えられがちである。そういった事業者・業界にとっては発想の転換が必要となる時代となった。消費者の安全や信頼を確保するための負担は、単なるコストではなく、むしろ経営パフォーマンスを向上させるための投資であるという発想が必要となる。
消費者が安心して市場に参加できるものになれば市場は拡大する。これまでは不安におびえ市場参加を控えていた潜在的な消費者も市場に参加するからである。現在は、消費者が不安を抱えているために縮小している市場も少なくない。例えば、一昨年の農薬入り中国製冷凍餃子事件が起きて以降、冷凍餃子市場は著しく縮小した。その影響は冷凍食品市場、輸入食品市場にも現れている。
消費者と事業者の利害は対立するものではないという認識の元、安心と信頼を自ら確保し、消費者情報を積極的に集約・分析し、経営に活かせるような優良事業者は、活躍のフィールドがますます拡大する時代となるだろう。
もちろんこれは、我々消費者が提供される情報を正しく理解し、優れた事業者を選定できる判断をする努力が前提となる。これから迎える本格的な消費者庁時代は、我々消費者の責任も大きい。