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サーチ・ナウ

2009.10.13 民主党の森林・林業マニフェストを読み解く

環境・エネルギー部 副主任研究員 相川 高信

 森林・林業政策について、民主党のマニフェストでは、「森林所有者に対して森林の適切な経営を義務付け、間伐等の森林整備を実施する上で森林所有者が負担する費用相当額を交付する『森林管理・環境保全直接支払制度(仮称)』を導入」との記述がある。
 これが実現すれば、戦後の森林政策のコンセプトを根底から覆す、新しい森林政策のパラダイムを開くものになる可能性を秘めている。やや専門的になるが、マニフェストの持つ意義を欧米諸国との比較等を行いながら、解説してみよう。

■欧米と日本における森林所有者の「義務・責務」の違い
 欧米先進国において、森林所有者は森林を森林として維持することが、法律により森林所有者に義務付けられている。また、具体的な森林の取り扱いについても、環境への配慮がかなり詳細に記述されており、事実上、森林所有者への要求事項として機能している。
 他方、日本では、法律上、森林所有者の義務は明記されておらず、森林・林業基本法に「義務」より弱い「責務」として「森林の有する多面的機能が確保されることを旨として、その森林の整備及び保全が図られるように努めなければならない」と記述されているに留まっている。
 なお、具体的な森林の取り扱いについては、日本の場合、市町村森林整備計画等の「計画」で記述されるという構造になっている。

■金銭的支援は人的サポートとセットで
 マニフェストでは、森林管理の義務付けと引き換えに、補助金を用意するようであるが、これまでの補助金が有効に機能してこなかったことを見れば分かるように、それだけでは十分ではない。欧州でも、森林所有者に対する補助金が存在するが、同時に「フォレスター(森林官)」と呼ばれる森林管理の専門家が、所有者に森林経営や施業に対する具体的なアドバイスやコンサルティングを行っている。このフォレスターは、公務員であるか、森林所有者団体等の半公的組織に所属していることが多い。
 このような専門家のサポートが社会システムに組み込まれてこそ、専門知識を持たない森林所有者も適切な森林施業が可能になり、義務を果たすことができるのである。その意味で、2007年6月に民主党が発表した「森と里の再生プラン」で明記されてきた「フォレスター制度の創設」が重要な意味を持ってくるのである。
 なお、欧州における森林セクターに対する補助金は、日本と同様に単発の施業に対する補助が主で、農業セクターに対する直接支払い制度に類似する例はないことを付け加えておく。これは、農業に比べて林業の採算性が高いこと、林業収入はほとんどの森林所有者にとっての副収入でしかないためである。

■「補助金行政」からの脱却を
 ただし、「森林管理=所有者の義務、かつ所有者への直接交付」という仕組みそのものは実は非常に意義のあるものである。なぜなら、現在は森林組合が「所有者の代理で補助事業の実施主体になる」ということが常態化し、森林組合の企業的経営の実現を妨げているが、所有者が経営者=補助事業の実施主体になるという本来のあるべき姿に回帰していくことが期待されるからである。
 また、現在の補助金のメニューは、似たようなものが大変多く、現場からは「全体像が分からない」「事務手続きが煩雑すぎる」などの悲鳴が聞こえてくる。これを契機に、補助金メニューをシンプルなものに再編し、同時に手続き面でも現場のインセンティブを引き出すような心のこもったものに大胆に改革されることも期待したい。

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