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サーチ・ナウ

2009.12.14 『これからの道路整備の評価』

研究開発第1部(名古屋) 主任研究員 佐藤 尚

 政権交代した民主党のマニフェストを見ると、公共事業については、『時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す。』、『道路整備は費用対効果を厳密にチェックした上で、必要な道路を造る。』とある。新政権の誕生によって、益々公共事業に対しての風当たりが強くなってきていると感じる。それでも真に必要な社会インフラを整備することは必要であると思うが、これまでよりも厳格な評価が必要となり、これまで以上にアカウンタビリティが重要になって来るであろう。
 ここで、事業評価に関して、筆者がこれまで業務として数多く携わってきた、道路整備の事業評価を例にとってみる。道路整備の判断基準に関しては、通常、費用便益分析が行われている。費用便益比(B/C:ビーバイシー)とは、事業を行い道路を利用することにより発生する便益(B:Benefit)と、事業に係る費用(C:Cost)とを比較し、便益が費用を上回れば(すなわち、B/C>1.0)事業を実施するに値するというものである。
 このB/Cが高ければ高いほど、費用に対する効果が高くなり、事業を実施する優先順位が高まることを意味し、全国一律に事業の評価が出来ることは非常に意義のある事である。しかしながら、このB/Cが1.3、2.0等と数字で示されただけでは、地域住民等にとっては分かりにくく、本当に必要な道路かどうかについて十分な説明責任を果たすことが出来ない。この道路整備事業を実施して「住民の生活がどう変わる(豊になる)のか?」、また、「地域の産業にはどの様な効果があるのか?」等、対住民、対企業向けの効果指標を作り、示していく必要があるのではないだろうか。
 国土交通省のマニュアル「道路投資の評価に関する指針(案)」では、道路整備の効果(便益)について、「走行時間短縮効果」、「走行費用減少効果」、「交通事故減少効果」、「環境改善効果」を便益として計測するとある。しかしながら、これらは、交通市場内の発生効果を捉えたものであり、必ずしも、地域住民や企業の方々にとって分かりやすい指標とはなっていない。そこで、近年の学術研究では、SCGEモデル(Spatial Computable General Equilibrium:空間的応用一般均衡モデル)など、道路整備が地域へもたらす帰着効果を、理論的かつマニュアルにおける便益と整合的に分析できる定量分析手法が研究されており、弊社においても、受託業務に本手法を活用して道路整備が地域へもたらす帰着効果を定量的に分析し、国土交通省を始めとした道路行政に活かされている所である。このSCGEモデルで考慮されている経済循環は、新しい道路を利用することによる「所要時間短縮」や「物流コストの低下」から波及する、「企業利潤の増加」、「生産額の増加」、「財・サービス価格の低下」、「雇用の増加」、「住民の所得水準の向上」など、地域へもたらす帰着効果を一般均衡理論に基づき推計している。その結果、最終的に各地域に帰着する便益はどの程度発生するのか、また、各地域の生産額や付加価値額はどの程度増加するのか、などの指標を推計することができ、国土交通省のマニュアルでは分析することができない地域への帰着効果について、有益な情報をアウトプットできる分析ツールとなっている。
 公共事業に対し様々な批判がある中、住民等へのアカウンタビリティが益々重要となり、事業採択についてはB/Cの議論だけに終始せず、SCGEモデルの推計結果などを活用しながら合意形成を図って必要な道路については早急に整備を行い、よりよい社会基盤の構築を目指していく必要がある。

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