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サーチ・ナウ

2010.01.18 人事戦略と生物多様性について

環境・エネルギー部 主任研究員 斉藤 栄子

■理解されていない多様性の重要性
 愛知・名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が近づいてきた。筆者は、5月のサーチナウ「『生物多様性と企業』にピンと来ない方へ」にて、生物多様性(生態系)保全はこれまでの環境問題の進化系ととらえるべきであること、遺伝資源の利益配分に関する議論に着目すべきであることと紹介したが、その後、多様性の重要性そのものも、もう少し理解されるべきと感じたので、「生物多様性」「多様性」について改めて説明させていただきたい。

■企業、人事戦略における多様性(ダイバーシティ)
 9月、前回のサーチナウを読んだという某テレビ局編集者の取材を受けた。生態系に着目したビジネスを番組で取り上げるという編集者に、生物多様性とそれを支える生態系の重要性を説明し、理解いただいた(と思う)。その後の雑談の中で「多様性は、国や企業の中でも重要。一党支配よりも多数の党で議論ができる国の方が健全であるし、企業についても、同じようなプロフィールの社員ばかりの会社よりも、さまざまな背景や考えを持つ社員が集まった会社の方が変革に強い。」という話になり、テレビ局の編集者にとってはその説明の方がわかりやすかったらしく、大きく頷いて聞き入ってくださった。
 企業では、社会的責任、男女共同参画支援などを背景とし、また、能力ある人材を育成・活用することを目的として、障害者雇用、女性採用・登用、差別のない人事評価などが進められているところである。が、近年、さらに一歩進んだ「ダイバーシティ(多様性)・マネジメント」が注目されている。これは、多様な個性を持った従業員がそれぞれの能力を存分に発揮することが、企業の競争力を強めるという考え方を基本としている。

■自然界における多様性とその危機
 自然界も同じだ。多くの種の生物が存在し、またそれぞれの種の中で様々に異なる遺伝子をもつ個性ある生物が存在することで、自然界(生態系)は環境の変化に適応する力を持つことができる。森林面積や鯨の頭数が減少することも問題ではあるが、生物種の絶滅速度が急激に上昇していることも同様またはそれ以上に脅威とされているのは、このためである。「現在の絶滅速度は化石に見られる絶滅速度の最大1000倍速い」(注1)、「1975年以降の絶滅速度は、1年間に4万種」(注2)、「日本に生息する哺乳類のうち23%、両生類の34%が絶滅危惧種にある」(注3)など、生物種絶滅の脅威に関するデータは枚挙に暇がない。
 生物種の絶滅は、乱獲などにより直接引き起こされるものだけではなく、生物の生息地(特に熱帯雨林)の破壊、大気や水質の汚染、気候変動、外来種の導入などさまざまな原因で起こっているが、いずれにせよ、人間活動に起因するものばかりである。この中で、「外来種の導入」はこれまでの環境保全になかった要素であり、生物多様性の重要性を知らなかったという理由だけで、外来種によって絶滅の危機にさらされている種も少なくない。

■切迫感が感じられる国家戦略目標
 平成19年に策定された「第三次生物多様性国家戦略」では、「生物多様性」という言葉の認知度を平成23年度末までに50%とすることを目標の一つとしている。控えめな目標に見えるが、平成21年6月の内閣府調査結果では36.4%であり、しかもこれは「言葉の意味を知っている(12.8%)」と「聞いたことがある(23.6%)」の合計である。ラムサール条約湿地を増やすといった具体的な成果目標と並び、認知度向上の目標が設定されていることから「まずは知ってもらうだけでも有効。だが知られていない。」という切迫感が感じられる。
 名古屋でのCOP10を起爆材にし、「生物多様性」「生物多様性の重要性」の認知度が高まることを切に期待している。
(本原稿を読み終えた読者は、国家戦略の目標達成に貢献したと自負いただきたい。)


(注1)「ミレニアム生態系評価」
(注2)環境省 生物多様性センターweb 
(注3)環境省「レッドデータブック」

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