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サーチ・ナウ
2010.02.08 サーチ・ナウ:森林・林業再生プランは参加型の議論で進めよ
2009年12月25日、「森林・林業再生プラン」が発表された(注1)。新政権となってから、農林水産省(林野庁)の名前で発表された、初めての統一的な改革パッケージである。いよいよ、具体的な検討・改革が工程表に載ってきたと言うことができ、森林・林業関係者の期待が高まっているところである。
本コラムでは、その意義とポイントを解説するとともに、今後の議論の透明性の担保と、多様なステークホルダーの議論への参画の必要性を訴えたい。
■森林・林業再生プランのポイント
森林・林業再生プランの詳細な解説はここでは割愛するが、そのポイントは以下の3点に集約できる。
(1)農林水産省(林野庁)名で出た最初の統一的な改革パッケージであること
ポイントの一番目は、冒頭に触れたように「政権交代後、農林水産省(林野庁)名で出た最初の統一的な改革パッケージであること」である。
プラン自体は、詳細な内容までは書き込んではおらず、大まかな方向性を示すにとどまっているが、示されたテーマごとに今後は検討・改革が具体的に進んでいくものと考えられる。
(2)目標が野心的であること
プランの目標は、「10年後に木材自給率を50%に引き上げる」というものである。
現状の自給率が2割程度であることを考えると、この数字は言うまでもなく野心的である。既存の政策の微修正では達成は不可能であり、森林法等の法制度の抜本的な改革や、将来的な木材需要のあり方も含めた総合的な議論が必要である。
(3)制度の全面的な見直しが明記されたこと
森林・林業分野の各種制度は、基本的に戦後に荒廃した国土に木を植え、「育てる」ために設計されたものであった。ところが、資源を「利用する」段階に入ったにも関わらず、ほとんどの制度が微修正を繰り返すだけで時代に合わないものになっていった。組織内部からの改革は官民問わず困難であり、政権交代は旧来のシステムを一から設計し直す、またとない好機である。
2010年1月21日に開催された第1回推進本部では、赤松大臣から「制度の抜本改正に踏み込む」という発言もあり(注2)、検討委員会ではゼロベースでの議論が期待されている。
■透明性の確保と参加型の議論
森林・林業再生プラン自体は、大まかな方向性を示すにとどまっており、その詳細については、政務三役らから構成される「森林・林業再生プラン推進本部」の下に設置される、5つの検討委員会でその詳細が話し合われることになっている。
したがって、プランの成否はこの検討委員会での今後の議論に懸かっていると言えるが、議論の透明性の確保と、ステークホルダーとの対話の促進が不可欠である。
例えば、木材自給率50%という野心的な目標が持続可能な方法で達成されるかを、社会は注視するだろう。つまり、皆伐と再造林の放棄という資源的・環境的な問題を引き起こしたり、現場で働く方々に危険を強いたり、賃金を搾取することで実現する目標であれば、意味がない。
また、森林・林業再生プランの議論は、全国の森林・林業関係者の将来に直結するため、高い関心が集まっている。議論の結果が、長期的な改善をもたらすにせよ、短期的には制度の抜本的な改革により、現場に負荷をかけることは間違いない。いくら政府が高い理念を持って改革を推し進めても、対話による合意形成をはじめからプロセスに組み込んでおかないと、プランが描く将来像の実現は危うい。
こうしたことを考えると、プラン自体の方向性は「政治主導」で出されたものであっても、今後の検討−実践−評価という各プロセスにおいても、議論の透明性の確保とステークホルダーとの対話の推進が不可欠である。具体的には、検討会の議事禄の公開はもちろんのこと、ウェブを通じた意見募集や、各地での公開フォーラムなども有効だと思われる。
■国際的な要求を満たすものに
そしてこのことは、各国の森林・林業行政の執行において、国際社会で推奨されている基本的な事項でもある(注3)。
1992年のリオの地球サミットで取り上げられた3つの大きなテーマは気候変動対策、生物多様性保全、そして森林保全であった。このうち、森林以外の2つのイシューは国際条約が批准され、2010年の国際社会における非常に重要なテーマになっている。
森林については、法的拘束力を持つ「森林条約」の批准は見送られたが、「森林原則声明」が合意された。これ以降、各国の森林行政の自主性・責任が再確認されるとともに、森林行政の透明性の確保や参加型システムの採用、森林資源のモニタリング等を通じて、国際社会に対して説明責任を果たすことが求められるようになったのである。
今回の森林・林業再生プランが、このような国際社会の要求にも応える質の高いものになることを期待したい。今後、日本よりやや遅れて、森林資源の利用に入る韓国や中国等のよき規範となることができる、抜本的な改革を自らの手で成し遂げることができるかが問われている。
(注2) http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012101000652.html
(注3)http://www.nfp-facility.org/18939-1-0.pdf