ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > キャダバートレーニング
サーチ・ナウ
2010.03.01 キャダバートレーニング
■キャダバートレーニングについて
近年、外科手術の安全性と質の確保のために、外科系の学会を中心に「キャダバートレーニング」の必要性が指摘されるようになってきた。キャダバートレーニングは、新鮮遺体(Cadaver)を用いた手術トレーニングの方法であり、人と動物との解剖学的差異の影響を排除し、医師が真に実践的なトレーニングをするために重要と指摘されている。
キャダバートレーニングは米国等で実施されているが、わが国では、大学や病院、医療機器企業等により手術トレーニングシステムが整備・運用されているものの、キャダバートレーニングが行われているのはごく一部の大学のみである。ほとんどのケースでは人体模型や仮想人体シミュレータによる手術トレーニング、動物による手術トレーニングなどに留まっている。国内でキャダバートレーニングを行えないために、医師によっては海外のトレーニングセンターを活用してキャダバートレーニングを行っている。
■キャダバートレーニングの法的解釈について
わが国でキャダバートレーニングが行われない背景のひとつは、キャダバートレーニングに関する法的解釈が確立されていないことである。キャダバートレーニングは死体解剖保存法における「正常解剖」にはあたらないとされ、また、刑法190条の死体損壊罪に抵触する"可能性"が指摘されている。しかし、「やってはいけない」と明示されてはいない。なお、法的解釈ではないが、キャダバーをトレーニングに使用するという考え方そのものに否定的な見方もあるようである。
■キャダバートレーニングに関する議論への期待について
キャダバートレーニングの是非については慎重な検討を要することは言うまでもない。近年、患者のQOL(生活の質)を高める手術が普及する一方で、手術手技の難易度は急速に高まっている。今後ますます高度化・精密化する手術手技において、患者がそのメリットを安全・確実に享受するために、是非、法的解釈をはじめとしてキャダバートレーニングに関する積極的な議論を期待したい。
医師が実際の患者の手術を通じて技量を高めるという側面はどうしても残るが、「最初の患者に手術をする前に、いかに技量を高めるか」は、多くの患者にとって、きわめて重要なことである。