ホーム > 政策研究事業 > サーチ・ナウ > サーチ・ナウ:原油価格の乱高下への対応策
サーチ・ナウ
2010.04.05 サーチ・ナウ:原油価格の乱高下への対応策
本年2月26日に開催されたIEA/IEEJ東京会合において、直嶋経済産業大臣は、「原油高騰の原因は様々だが、将来の需給逼迫に対する不安感が主な原因だったとの合意が形成されつつある」と述べている。
それでは、将来の原油需給(ファンダメンタルズ)への不安感をなくし、原油価格の再高騰を防ぐことは可能なのか。
最近数ヶ月の原油価格(WTI、期近物)は、概ね70〜80$/bで推移している。これは、市場関係者の間で現在のファンダメンタルズの状況に即し想定される価格について、ある程度の(暗黙の)合意が存在しているためと言える。従って、ファンダメンタルズの見通しに関する合意が崩れれば、あるいは、見通しをするのが難しくなれば、価格は、再度、乱高下するリスクがあることを示しているとも言えよう。ファンダメンタルズに関する状況は流動的であり、将来のファンダメンタルズに対する見通しも流動的なのである。
さて、現在の状況を勘案すると、将来のファンダメンタルズを見通す上で重要となる要素としては、新興国の経済成長による石油需要の増加度合、先進国の経済回復の度合、代替エネルギーの普及度合、石油供給の生産能力拡大の度合等が挙げられよう。紙面の関係上、これらに関して詳述することは避けることにするが、私見を述べれば、ここで最も注目すべきは、中国のモータリゼーションの進行速度、電気自動車(あるいはプラグインハイブリッド車)の普及速度、イラクの生産量拡大速度であると考える。
石油代替の動きは、電力源の代替を初め各分野で進んでいる。但し、運輸分野において石油を十分に代替しうる燃料はまだ普及していないため、中国(あるいはインド)における自動車保有台数がこのまま増加し、かつ経済発展に伴う物流量が増加し続けると、今後10〜20年において、莫大な石油資源が消費されることになる。この動きを止められるものは今のところ何もない。将来的にあるとすれば、電気自動車が大々的に普及することである。電気自動車は、ガソリンやディーゼルを一切使用しないため(電力源として石油を使用することはありうるが)、その石油代替効果は甚大である。しかし、電気自動車を普及させるには、蓄電池の性能向上や充電インフラの整備といった問題を克服していかなければならないため、大々的に普及するまでには、早くても10〜20年はかかると言われている。
それでは、電気自動車が普及するまで、中国(あるいはインド)において石油消費が大幅に増加していくのを座して見ているということになるのか。幸いにして、OPECの余剰生産能力は現在十分存在し、近い将来石油需給が急速にタイトになるとは思えない。しかし、非OPEC諸国の原油生産量が頭打ちとなり、今後生産量を拡大させるためには、カナダのオイルサンドのような高コスト原油の生産に頼らざるをえないことを考えると、OPECの余剰生産能力もいずれ低下していくことが予想される。そのような状況下において、大きな望みとなるのは、イラクにおける原油生産量の拡大見通しである。イラクでは、2009年において、油田・ガス田開発に関する国際入札が2回にわたり実施され、今後6〜7年の間に、大幅な生産能力の拡大が見込まれている。但し、国内政治情勢、輸送インフラ整備、OPEC生産枠の割当て等の問題により、実際の生産量をどの程度まで増大しうるかは、不透明な面がある。
以上が将来のファンダメンタルズに関する大まかな見通しであるが、これらの様々な要素の見通しに関して、市場関係者の間で合意をとることは、決して簡単なことではない。また、見通しの方向性が一方に傾くと、(例えば中国の石油需要が急激に増え、イラクの情勢が悪化すると多くの投資家が予想した場合)、原油価格が一気に高騰する恐れもある。重要なのは、ファンダメンタルズの情報に関して正確に分析し、悪戯に価格が高騰したり、乱高下したりすることがないよう、最大限努力することである。直嶋大臣は、次のようにも言っている。「将来の石油需要・供給に関する情報不足が昨今の価格高騰を招いた。そうした事態を防ぐために、各機関・各国の連携による情報共有が求められる。」