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サーチ・ナウ
2010.06.07 「地域ケアシステム」実現の論点
高齢者介護・福祉分野では、戦後団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢期に入る2025年時期を整備目標時期として見据えて、現在、3つの政策ジャンルが展開している。(1)特別養護老人ホーム等の介護・福祉施設の整備、(2)高齢期の生活機能の段階と費用負担力に応じた多様な「住まい」の整備、(3)住み慣れた住まいで安心して住み続けられる「地域ケアシステム」の構築である。第一の政策ジャンルに関しては、現在、過少に見積もっても50万人弱は存在する特別養護老人ホームの入所待機者(厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」2009.12.22.公表)のための施設整備が喫緊の課題である。ただし、本稿では、大半の高齢期の人が本来希望している第三の政策ジャンル『住み慣れた住まいで安心して住み続けられる「地域ケアシステム」の構築』に焦点を絞って、当面の重点施策の柱とその実現に向けたポイントを指摘したい。
「地域ケアシステム」の構築に関する国家の政策目標は、実はここ20年間一貫して掲げられてきたものである。ただし、この20年間に明確な成果があったかと言えば、100%の首肯はしにくい。退院して自宅で在宅療養生活に入る段階における病院の「退院支援機能」については、全国的に一定の整備の進展が見られる。しかし、「在宅の高齢者が24時間、安心して過ごせる」ために、地域の医療や介護、その他生活支援サービス間が緊密に連携する仕組みが全国的に構築されているかといえば、ごく一部の先駆的な取組みを実践している地域に構築されているに過ぎない。
具体的にみてみよう。在宅の高齢者は、地元の市区町村に電話で問合せたり、出向いて窓口で説明を受ければ、どのような医療や介護、生活支援に関するサービス提供事業者、コーディネーター(介護保険ケアマネジャー、訪問看護、地域包括支援センター 等)が地域の中で活動していることは、おおよそは理解できるだろう。しかし、自身に必要なサービスを選び組み合わせ、サービスのアセスメントとサービスの選択をするなどの一連の行為に対して支援をしてくれる人を見つけることは、相当に難しい。実際には、どの機関もその役割を負いきれていない。そのような役目をもつのはケアマネジャーかといえば、高齢者が要支援にならなければ、ケアマネジャーの支援対象には入ってこないし、また、利用に伴う事故発生リスク回避を勘案し、介護保険給付サービスの領域の中のサービス利用の支援者に留まりがちである(このこと自体、現在大きな制度課題となっているが)。
一方、その役割を期待されて発足した地域包括支援センター(平均的には、人口2.5万人(中学校地区程度)に1箇所整備されている)は、予防給付のケアマネジメト等に精一杯のセンターも少なくなく、高齢期の在宅生活における各種の相談ごとや心配事を受け止め、医療・看護、介護、生活支援サービスを連携し、個々の在宅高齢者本人に対して、24時間365日切れ目なく、総合的に支える拠点とはなっていない。また、担当地域に住むひとり暮らし高齢者の把握を網羅的にできていない地域も多い。
加えて、従来から実施されてきた市区町村の高齢者保健福祉サービスの一環としての緊急通報サービスや配食サービスは、自治体の財政緊縮事情も影響して、自費負担額増や利用者対象限定等の対応が各地で起きている。また、市区町村の高齢者保健福祉所管部署のスタッフかといえば、原則、土日以外の午前9:00〜午後5:00の時間帯での対応である。
そもそも、在宅の高齢者は、自立して過ごしている時期でも、日中や夜間の発作や転倒等の「不安」を具体的に解決できる仕組みを持てなければ、在宅生活を継続していける自信を加齢とともに急速に失っていきやすい。そのことが出不精になったり、人と話すことを避けたり、食事が不規則になり偏食になったりして、ついには廃用性の生活機能低下を引きおこすことになりやすい。
在宅の日常生活の不安解消と緊急対応のための有効な仕組みとして、現在、緊急通報サービス、夜間対応型訪問介護、日中訪問介護の緊急夜間訪問等の制度サービスがある。しかし、これらの類似制度間の役割分担の明確化を含めて、24時間訪問介護が全国的に展開される事業モデルの再構築が課題となってきている。
| 事項 | 夜間対応型訪問介護 | 緊急時訪問介護(加算) | 緊急通報システム |
| 利用対象者 | 要介護(1〜5)認定者のみ | 要支援、要介護 | 65歳以上・単身世帯・健康状態が不安定な方 |
| サービス 内容・種別 | 定期巡回、随時訪問 (相談、身体介護、生活援助、見守り) オペレーションセンターサービス | 随時訪問 (身体介護中心) | 通報に基づく緊急かけつけ (安否確認) オペレーションセンターサービス |
| 対応時間 | 24時間(日中はオペレーションセンターサービス) | 24時間 | 24時間 |
| 通報時の対応 | ホームヘルパー | ホームヘルパー 身体介護中心 | 協力員、民生委員 消防、民間かけつけ事業者 |
| 特徴 | 介護保険地域密着型サービス。 日中の出動は、連携した訪問介護事業者が実施。 | 介護保険居宅サービス。 身体介護が中心のものに限定し、安否確認・健康チェック等の場合は、訪問介護費の算定対象とならない。 | 自治体高齢者福祉サービス。 自治体一般財源。 利用者負担ある場合もあり。 |
資料:執筆者作成
なお、公表されている厚生労働省老健局作成「全国介護保険・高齢者保連福祉担当者課長会議資料・平成22年3月5日」でも明記されているように、今年度から、地域での医療や看護と介護との連携構築に向けたさらなる検討や、24時間継続した見守り体制を構築するためのコーディネーター機能の育成配置、既存類似サービスの統合による訪問サービス体制の構築に向けた取組み等が一斉に始まることが注目される。その際、既に事業参入している「緊急通報サービス」、「夜間対応型訪問介護」、「訪問介護」その他新規参入事業者含めて、公正な市場創出競争を促す制度設計が欠かせない。
今後このサービスが、在宅高齢者の「安心を支えるコミュニケーション・インフラサービス」として、付加価値を高める最大のポイントは2つある。第一に、「受付、相談、ヘルパー出動指令、他への連携」を行うオペレーターに、適性とノウハウのある人材を配置し育成するという点である。第二に、地域の医療、看護、介護、生活支援の活動機関との間で、利用者の健康や医療機関等情報の共有化や協働対応の協力関係を構築することである。
なお、「発作や転倒リスクを抱えた自立高齢者向けの、24時間相談対応や現場対応サービス」市場については、今後、介護保険や自治体介護・福祉行政の中でどのように再構築されていくかは、各種の公表資料からは不透明である。制度再編の動きを見据えつつ、当面は自費市場として位置づけられることも見越した検討も必要である。