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サーチ・ナウ

2010.06.14 サーチ・ナウ:行政評価の活用に向けて

研究開発第2部(大阪) 主任研究員 江口 雅祥

■行政評価は活用されているか
 わが国の行政経営において、行政評価(業績評価)が導入されてから久しい(ここでは主に地方自治体を想定しているが、国の省庁や独立行政法人等他の公共機関でも同様である)が、多くの自治体で、行政評価を導入しても当初期待されたような効果が挙がっていない、という声もよく聞く。その理由はどこにあるのか。要約すると、行政評価を活用するためには、第一に、行政経営システムの全体最適化が必要である。第二には、評価情報を活用するスキルが必要である。以下、この2点について論じていきたい。

■評価を組み込んだ全体最適型の行政経営システムとは
 多くの行政組織では、従来の管理の仕組み、すなわち、予算編成や定員配分、人事管理といった行政システムはそのままで、そこに後から行政評価を付け足している。これでは、行政評価に限定した、部分最適化に留まる。一方で、全体最適型の発想では、「成果志向」「マネジメントサイクル」といった新たな視点を踏まえた上で、今一度、全体のあり方を見つめ直し、従来からの行政システムも含めた制度設計を行おう、といった発想になる。これが行政評価も含めた、全体最適化である。
 全体最適型の行政経営とは、どんな姿を思い描けばよいのか。その条件を挙げれば、少なくとも次の5つの要素が重要となろう。
 第一には、計画(目標)の戦略化(重点化)をしているかどうかである。資源制約がある中では、より重要な目的を絞り込むといった価値判断を、評価の結果として行うのではなく、マネジメントサイクルの出発点で行っていることが肝心となる。
 第二に、上記で設定した目標実現型のマネジメントサイクルを構築しているかどうかである。そのためには、客観的な評価情報に基づく経営判断を行うような政策議論の場(プロセス)が重要となる。
 第三には、政策・組織・予算・評価の各体系の整合性をとっているかどうかである。政策−施策−事業−業務といった政策(計画)の体系、予算大事業−中事業−小事業といった予算の体系、政策指標−施策指標−事業指標といった評価の体系、局−部−課といった組織の体系が、それぞれバラバラに存在するのではなく、一貫性のある形で整合性が図られていることが重要である。
 第四に、経営目標の連関性である。全庁的な様々な経営目標が、各部局や各所属の目標と連動したものになっているかどうかである。そのためには、組織階層の各層においてバランススコアカードを作ってみるといった発想が役に立つ。
 そして、第五には、意思決定の集権・集中性と分権・自律性とのバランスをとる必要がある。トップダウンでの意思決定(いわゆる資源の枠配分)と、その下でもボトムアップ(一定の枠内での自律的な改善)とを両立させているかどうかである。
 その他に、政治(マニフェスト)サイクルとの連動性や、多様なステークホールダー間における政策目標の共有と政策形成への参画ができているかどうかといった要素も重要である。

■評価の情報を活用するスキルの向上を
 客観的な評価(業績)結果の情報は、うまく活用することが求められる。活用の方向としては、以下のようなことが考えられる。
 第一に、総合計画やマニフェストで掲げた(戦略的)目標の達成状況についてのモニタリング報告に用いることである。
 第二に、決算報告において歳出のアカウンタビリティを確保するために、当該年度の成果の説明にあたって、どれだけ支出したかという情報に加えて、その支出に対応する結果を示すことである。
 第三に、資源配分(予算編成)の説明への活用である。予算編成によって資源配分を行うこととは、当該施策のサービス水準(成果)の見込みに基づく決定をしていることになる。
 第四に、業務の執行状況やサービスを検証して、一層の改善に用いることである。そのためには、ベストプラクティスとの比較検討(ベンチマーキング)や、組織内で類似の業務をやっている他部門との比較検討(インターナルベンチマーキング)を行うことが有効となる。
 第五に、仕事の成果を目に見えるようにし、優秀なものは表彰するなどして、当該部門の職員のモティベーション・アップにつなげることである。
 第六に、より詳細なプログラム評価への活用である。プログラム評価とは、行政施策について、課題は何か、なぜそうなったのか、解決策は何か、といった点について、より詳細な分析を専門的見地から行うことである。このプログラム評価を行う際の基礎情報として、行政評価の情報は極めて有用である。
 そして、上記のような市民やメディアと行政とが分かりやすくコミュニケーションを行う上で、評価情報は活用することができる。
 以上のような活用にあたっては、指標の内訳(属性別、地域別)の分析、時系列推移の分析、他団体と比較の分析、住民実感との比較分析、地域情報を集約したカルテ化等のちょっとした分析上の工夫を行うことで、多くの施策展開上の示唆が得られたり、住民にとってより分かりやすい説明を行うことが可能になったりする。こうした活用のスキルを行政は備えていく必要がある。
 行政評価の活用に困っておられる組織では、このような視点をもって、今一度、見直してみてはいかがだろうか。

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