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サーチ・ナウ

2010.07.07 サーチ・ナウ:政府調達における新たな契約方式導入の提案

経済・社会政策部 主任研究員 相川 宗徳

1.民間活力を活かしたもう一つの政府支出削減策
 行政全体のあり方、公共と民間の役割分担の見直しを行うために、民主党政権は平成21年9月に行政刷新会議を設置し事業仕分けを開始した。第一弾は昨年の年末、第二弾は今年の春に行われ、国民の注目を浴びている。これまで、政府は「無駄遣い撲滅対策」等に取り組んできたが、事業仕分けは国や関連団体が行っている事業そのものを仕分けしているという点で、これまでの取り組みと一線を画している。事業仕分けによる行政のスリム化に期待しつつも、本稿ではもう一つの政府支出削減を提案したい。
 政府は公募等の方法で多くの外部調達や委託事業を行っている。これまで、事業や外部調達の予算を削減に取り組んだり、事業仕分けすることで事業の存続を検討してきた。もう一つの方法として、民間活力を活かした新たな契約方法を導入して経費削減を図ってはいかがだろうか。

2.米国の方法
 アメリカの連邦政府における調達システムは、1990年代のクリントン政権時代に大きな制度改革が行われた。民主党政権は大きな政府を目指すと思われがちだが、同政権下では「国家業績再点検本部(National Performance Review, NPR)」が創設され、連邦政府の行政改革が行われた。大統領府の予算管理局にはハーバード大学からSteven Kelman教授が招かれ、1994年から「連邦調達近代化法」「連邦調達改革法」が成立し、1997年に連邦調達規則が制定された。この規則では連邦政府の調達における公募方法や契約方法について決められており、我が国の公的な調達制度を考える際にも大いに参考になると考えられる。

3.民間活力を活かした新たな契約方法
 米国の連邦調達規則から、インセンティブ契約という興味深い契約方法ご紹介したい。インセンティブ契約は、契約額を固定するよりも、契約先の経営努力によって調達価格を低く抑え、高い品質の財やサービスが調達できる場合に有効だと考えられている。
 図1にインセンティブ契約を採用した場合の調達額の変化を示しているのでご覧いただきたい。横軸が物件費、縦軸が契約先に支払う手数料を表している。斜めの直線は契約企業の物件費と政府から支払われる手数料の関係を示している。政府の調達額は物件費と手数料の合計となる。
 当初想定したP点である財を調達とすると、物件費100ドル、手数料8ドルとなり合計108ドルで契約を締結することになる。さて、契約企業が何らかの経営努力で点P*、すなわち物件費を70ドルまで低下させたとすると、当初予定より物件費が30ドル安くなる。予定価格に比べて30ドル経費が安くなるが、この物件費削減分を事業者と政府で分け合う方法がインセンティブ契約と呼ばれる。
 政府は新しい物件費70ドル、当初手数料の8ドル(OA)、インセンティブ6ドル(AB)で合計84ドルを支払う。同じ財を調達しながら24ドルの経費を削減することが出来る。契約企業は当初より多くの14ドルの手数料を受け取ることができる。企業は調達コストを引き下げる努力をすることで、当初の予定より多くの手数料、すなわち報酬を受け取ることができる。これがインセンティブ契約と呼ばれる理由である。
 物件費が130ドルになった場合(P**)はどうだろうか。政府は手数料を2ドルしか契約先に支払う必要がない。政府支出は、新しい物件費130ドル、手数料2ドル、合計132ドルになる。物件費は30ドル上昇したが合計24ドルの支出増で済ますことが出来た。契約先は手数料2ドルしか受け取ることが出来ないが、このような事態が起きないように経営努力を怠らないだろう。政府にとっての調達価格が上がりにくい契約になっている。
 我が国で見られるように、調達価格(物件費)が100ドル、手数料が8ドルで固定されていると、契約企業は物件費を引き下げるための努力をするメリットがなく、結果的に政府支出は安くならず、価格は下方硬直性を持ってしまう。インセンティブ契約で、民間の活力を活かしながら政府支出を削減するというアイデアはいかがだろうか。

図1 インセンティブ契約における手数料と物件費

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