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サーチ・ナウ

2011.05.02 震災を契機に、エネルギーの自治を進めよう

環境・エネルギー部 副主任研究員 相川 高信

はじめに
 東日本大震災において被災された皆様に対し、心よりお見舞い申し上げたい。
 今回の震災により顕在化した問題に、私達のエネルギーシステムや政策のあり方がある。これまで私達は、「料金を負担すれば、いつでもスィッチを押せば電気が使える」という幸せな「消費者」でいることができた。ところが、震災により、福島第一原発の一連の事故や首都圏の停電など、私達の現在のエネルギーシステムや政策のあり方には、深刻な不調が存在することが、誰の目にも明らかになった。特に、エネルギー供給システムが中央集権型であるが故の脆さが露呈された。
 とは言いながら、あまりに巨大なエネルギーシステムに対して、どのような働きかけが可能であるか分からず、立ちすくんでしまう人々も多いのではないだろうか。そこで本稿では、そのような「消費者」の立場を超えて、エネルギーシステムを「市民」として「自治」していくことで、セキュリティーのレベルを高め、持続可能なエネルギーシステムを構築するための最初のステップを整理してみたい。

1.まず、エネルギー消費量を減らす
 エネルギーは水や食料と並んで、生存に不可欠な要素である。重要であるが故に、セキュリティーレベルを高めるために、まず最初に行なうべきことは、エネルギーの消費量を減らすことである。首都圏の停電により、私達が当たり前と思っていた煌々とした照明は、必ずしも必要ではないことに気がついた人も多かったはずである。
 地球温暖化防止の観点からも、建築物の断熱性能を高めたり、冷暖房の設定を緩めたり、可能な限りの省エネ機器を導入することなどが有効である。また、日本を含む先進諸国では、エネルギー消費量の増加と経済成長の間の比例関係は成立しなくなっており、好むと好まざるとに関わらず、エネルギー多消費型の産業構造は、変換されていくことになるだろう(注1)。

2.可能であれば、電気ではなく熱を直接使う
 次に、熱をそのまま利用できる場面では、電気ではなく熱をそのまま利用したい。
一般的な発電方法では、化石燃料の燃焼(もしくは核分裂)プロセスから熱を取り出し、蒸気等でタービンを回して発電しており、熱として使った方がエネルギー効率は高い。
 また、日常的な熱の用途は暖房や給湯・調理など、生存に不可欠なものであり、電気への変換を介さずに、直接利用できる方がセキュリティー面でもメリットがある。実際に、震災後の岩手県では、岩手・木質バイオマス研究会等のNPOの連携により「つながり・ぬくもりプロジェクト」が立ち上がり、災害救援用の焚き火ボイラーかまどの導入により、暖房・調理や風呂等に熱が使われている(注2)。加えて、電気ストーブやエアコンによる暖房よりも、薪ストーブ等の輻射熱を出す暖房機器の方が、「身体の芯から温める」ことにより、暖房の質が高いことも知られている(注3)。しかも、熱を得るのに従来のように化石燃料を燃やすのではなく、太陽熱やバイオマスといった再生可能エネルギーの熱を利用することができる。
 海外に目を向けてみると、欧州では気候がより寒冷であるということもあり、再生可能熱の利用は進んでおり、各国は更に積極的な導入推進政策を押し出している。例えば、ドイツでは、「再生可能エネルギー熱法」により、新築建築物の所有者に対して、一定割合以上の再生可能エネルギー利用を義務づけている。また、イギリスでは2011年4月から、世界で初の再生可能エネルギー熱の買取制度を発表したところである(注4)。
 東北などの寒冷地での熱利用は重要であり、インフラの再整備にあわせて、地域熱供給システムの整備も視野に入ってくる。今後の復興の際の重要な視点となるだろう。

3.分散型のエネルギー源に変えていく
 今回の震災で明らかになったことは、集中型システムは、有事の際に脆いということである。
単純に考えても、分散型の多様なエネルギー源を確保していた方が有利である。また、分散型のエネルギー源として現在想定されている施設は、太陽光発電や風車、中小水力発電、そしてバイオマス発電といった比較的小型なシステムであり、故障があっても修理は容易である(少なくとも周囲の環境を汚染しない)。なお、バイオマス発電については、(前述したとおり)発電だけでは効率が低く、熱利用をいかに組み合わせるかがポイントである。
 また、分散型という原則を活かしながら機器を導入することを考えると、「再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度」での買い取り価格を工夫する必要がある(注5)。具体的には、買取価格をコストベースで定め、小規模な施設の電力を高い値段で買い取る仕組みでなければ、一極集中型のバイオマス発電施設ができるだけである(このような施設は、広域からバイオマスを集めるので、LCA評価が低くなる可能性がある)。実際にドイツなど欧州先進国では、買取価格はコストベースが原則であり、出力規模別に買取価格を定めている(表1)。

表:ドイツにおけるバイオマス発電の買取価格(2010年)

出力規模買取価格(ct/kWh)
〜150kWel11.55
150〜500kWel9.09
500kWel〜5MkWel8.17
5MWel〜20MWel7.71
コジェネ(熱利用)ボーナス2.00

(出所)「Renewable Energy Sources Act, EEG」ドイツ連邦環境省より作成

4.ライフラインや病院等の緊急的なエネルギー供給源はバックアップを確保する
 最後に、どうしてもエネルギー供給を絶たれると困る施設については、自家発電やボイラー等の独立的に電気や熱を供給できる設備を用意する必要があるだろう。
 病院や浄水場については、基本的に自家発電設備が設置されているが、これはミニマムであり、地域の実情に合わせて基準を広げてもいい。例えば、避難所となる学校や公共施設でも、自家発電等のバックアップ設備はもちろん、生存に必要な暖房、調理・給湯などの自立的な熱供給設備のあり方も検討したい。ただし、自家発電や自立型熱供給設備にしても、十分な燃料の備蓄があるかどうかがポイントであり、エネルギー消費量の削減まで遡った総合的な施策がやはり大切である。

5.まとめ
 以上、概略ではあるが、今後地域のエネルギーシステムを「自治」していく方向性を示すことを試みた。もちろん、どんなに英知を尽くしても、「絶対安全」なシステムを構築することはできない。ただし、「想定外」を「想定」することで、リスクアセスメントを行い、有事の際の対処方法をシュミレーションしておくことこそが重要である。そして、このようなリスクをどこまで許容し、どこまでをコスト負担してリスクヘッジしていくかについては、住民参加型での議論に基づいて決めていくべきであろう。
 この際、大事なことは、エネルギーの消費者として、単純なコストや負担の高低を議論するのではなく、再生可能エネルギー導入による地域経済への貢献度等も含めて、自らの社会を存続させるために必要なエネルギーシステムを、自分達が引き受けて構築するという成熟した市民としての姿勢である。こうした動きが現れるようになるのであれば、エネルギー自治は3.11後の復興の希望となるであろう(注6)。


(注1)「低炭素経済への道」諸富徹・浅岡美恵(岩波新書2010)
(注2)岩手・木質バイオマス研究会ホームページ(http://wbi.main.jp/)。つながり・ぬくもりプロジェクトホームーページ(http://www.isep.or.jp/tunagari-project.html)。
(注3)例えば、「炎の文化再生-21世紀の火のある暮らしへ」相川高信(森林環境2008「草と木のバイオマス」(財)森林文化協会)
(注4)http://www.decc.gov.uk/en/content/cms/news/PN2011_023/PN2011_023.aspx
(注5)2011年3月に閣議決定された「再生可能エネルギー電気固定価格買取法案(仮称)」では、買取価格は15〜20円/kWhとされているが、具体的な価格の設定方法は決まっていない。
(注6)参考文献として「北欧のエネルギーデモクラシー」飯田哲也(新評論2000)がある。

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