2002年5月14日

IT主導で成長軌道回帰をめざすフィリピン経済


○2001年1月に発足したアロヨ政権のもとでフィリピンは政治の安定を回復したが、米国景気減速とIT不況は、輸出に占める米国向けとエレクトロニクスの比率が高いフィリピン経済に大きな影響を与えた。しかし、フィリピン経済は、輸出不振による工業部門低迷を、コールセンター設立や移動体通信設備投資などIT関連の成長でカバーし、2001年の経済成長率は、市場予想を上回る3.4%となった。

○フィリピンのマクロ経済構造の問題点として、銀行不良債権比率の上昇、政府財政赤字の拡大などがあげられている。フィリピンの銀行不良債権比率は周辺諸国よりも高く、現在、資産管理会社(AMC)が不良債権を買い取るスキームづくりが進められている。財政赤字は、アジア通貨危機後の1998年以降急拡大したが、アロヨ政権は財政赤字を2006年までに解消し収支均衡を達成することを目標としている。2001年の財政赤字がおおむね目標以下にコントロールされたことから、国際機関や外国投資家の信認は改善された。

○フィリピンは人口増加率が高く、一人当りの経済成長率は満足な水準とはいえず、さらに成長率を高めていかなくてはならない。そのためには、マクロ経済面では、歳入を増やし、金融部門を健全化し、投資と雇用の増加を図る必要があり、アロヨ政権は一定の成果を収めるものと期待される。他方、フィリピン国民の約4割が貧困層であり、貧困解消は大きな政策課題であるが、社会的不平等と貧困解消には相当な時間を要すると考えられる。

○フィリピンは、アジアでも有数の半導体・記録デバイス生産拠点であるが、最近では、ハードウェア生産だけでなく、コールセンターやソフトウェア、デジタル・コンテンツなどIT関連のビジネスに幅広く対応できる国として注目を集めている。フィリピンは、英語を媒体とする情報加工能力面においてアジアのなかでも最高水準にあり、また、アジアのハブとしての航空輸送アクセスの優位性もある。さらに、法制度面でも米国と非常に近く、よく整備されている。こうした点は、中国にはない長所であり、フィリピンは、他のASEAN諸国よりも、中国との競合に耐えられる可能性が高いと考えられる。フィリピンは単なるハードウェアの量産だけでなくIT関連の幅広い分野で強みを発揮することにより、中長期的な経済成長率を高めていくものと期待される。

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