2002年7月12日
○政府は、総務省が2001年11月に示した導入具体案(以下、総務省案)をもとに、法人事業税へ外形標準課税を導入する動きを強めている。総務省案によると、新しい法人事業税(以下、新税)は、所得課税部分(所得割)と外形標準課税部分(企業の付加価値額への課税部分(付加価値割)+資本への課税部分(資本割))で構成されている。所得割の法人事業税率は、現行制度の法人事業税(以下、現行税)の税率(9.6%)から半分(4.8%)に引き下げられるため、所得課税部分で減税になるが、外形標準課税部分が増税となる。なお、資本金1千万円未満の法人については、外形標準課税部分に代えて、定額年4.8万円を選択すること(簡易外形課税方式)も可能としている。
○外形標準課税を導入すると、企業の税負担は企業の外形部分(付加価値額、資本の規模)や所得によって現行税と大きく異なる。そこで業種別に企業の人件費(付加価値額の約8割)、資本、法人所得の状況をみると、1社あたりの人件費、資本は、化学、鉄鋼金属、機械、運輸通信(含む電気ガス)といった装置産業において全産業平均に比べ大きく、外形標準課税導入によって税負担を拡大させる要因となる。しかし、化学、機械、運輸通信の1社あたりの法人所得は全産業平均に比べ大きく、税率引き下げによる減税額を大きくする要因となる。このようにどの業種においても税負担が拡大する要因と縮小する要因が混在している。
○利用可能な統計を用いて業種別に現行税額と新税額を試算すると、建設、繊維、鉄鋼金属、小売、サービスの新税額が、現行税額に比べ3割以上増加する結果となった。一方、卸売の新税額は現行税額とほぼ同額であり、化学の新税額は現行税額よりも小さくなる。なお試算対象業種全体の新税額は現行税額に比べ約4,800億円(現行税比約16%)増加する結果となった。
○企業の収益状況が変化しないと仮定した場合、黒字企業が負担する税額は試算対象業種全体で現行税額より8.8%減少する。また現行制度では法人事業税を負担していない赤字企業が新税では約7,400億円と新税全体の2割強を負担することになる。
○資本金規模別に現行税額と新税額を試算すると、資本金1〜2千万円未満企業と資本金10億円以上企業の税負担が拡大した。一方で、資本金1千万円未満企業と資本金1〜10億円未満企業の税負担は縮小した。資本金1千万円未満企業の税負担が縮小する理由は、総務省案で示された簡易外形課税方式が税負担を1,700億円ほど軽減しているためである。
○外形標準課税導入による影響を考える際には、中期的な影響と短期的な影響を分けて考えるべきである。中期的には税収に中立であっても、企業の所得が落ち込んでいる時には増税となり、企業収益が高まっている時には減税となる。法人所得が増加した場合の法人事業税負担の変化を試算すると、法人所得が2000年度に比べて30%増加するとほぼ中立になり、さらに法人所得が増加すると新税の方が税額が少ないという結果となる。外形標準課税が導入された場合、それが結果として増税になるか減税になるかどうかは、企業収益の動向、さらにその裏にある景気動向によって違ってくる。
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