2002年10月18日
○全国銀行は92年度からの累積で80兆円を越える不良債権の損失処理を行ったが、不良債権の増加に歯止めがかからず、残高は2002年3月末には前年を約10兆円も上回る40兆円強にまで膨らんでいる。処理を行っても不良債権残高が一向に減らないのは、処理額を上回るペースで新規の発生が続いているためである。
○2002年3月末に残高が急増したのは、金融庁による特別検査で資産査定が厳格化されたことが一因である。特別検査の対象は主要行のうち検査対象企業のメインバンクに限定されたが、金融庁はその厳しい査定を全ての銀行に反映させる方針である。今後そうした状況が浸透してくると、全体として不良債権残高はさらに拡大するであろう。また、増加した不良債権の中身をみると、追加損失の発生するリスクのある債権の増加幅の方が大きいなど、質も悪化している。
○銀行の収益状況をみると、不良債権処理損失額が業務純益を上回る状況が続いているうえ、株安による含み損の発生もあり、一段と厳しさを増している。今後については既存の不良債権の処理に限れば、追加損失額はそれほど膨らまない。しかし、特別検査並みの厳しい査定がすべての銀行に拡大し、不良債権の新規発生にもブレーキがかからない場合には、追加損失が業務純益の範囲内では賄い切れない事態も予想される。
○このように不良債権が量・質ともに悪化し、銀行の経営環境が厳しさを増している状況において、不良債権の処理速度を加速させるべきとの意見がにわかに強まり、政府は10月中にも不良債権の抜本処理のために、公的資金の投入を含んだ「緊急対応戦略」を打ち出す方針を固めている。
○以上の現状を踏まえて、今後発表される「緊急対応戦略」における方針について、望ましいと考えられる姿をまとめた。すなわち、(1)不良債権の査定と引当は適正に行い、その基準は平等に適用されるべきである、(2)不良債権の残高を一気になくすのではなく、まずその膨張を防ぐべきである、(3)不良債権処理は金融システム不安の回避を目的として進めるべきである、(4)デフレ圧力を拡大させないためにも、企業の淘汰を不良債権処理の目的にしてはならない、(5)公的資本の注入は、必要な場合に、必要な銀行に限って行なうべきである、の5点である。これらの提言に共通する考え方は、不良債権問題の解決はわが国にとって避けては通れない課題であるのは事実であるが、処理を急ぐあまりその手段や本来の目的を間違って、デフレを加速させてはならないという点である。
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