2002年10月24日

社会保障制度の変更点とGDPへの影響


○医療保険制度を中心に、社会保障制度の見直しが進展しつつある。背景となっているのは、少子高齢化の進展による人口構成の変化や社会保障給付額の増大、景気の低迷などを要因とする、各制度の財政状況の深刻な悪化である。

○老人医療費を中心に国民医療費は増加基調で推移しており、足元では約30兆円となっている。医療費の増加と保険料収入の伸び悩みから、医療保険財政は各制度とも赤字基調での推移が続いている。

○サラリーマンを対象にする被用者保険において保険料の徴収に総報酬制が導入される。ボーナスも含めた年収を基準にして保険料が課されるため、年収に占めるボーナスの比率が高い人ほど負担が高まる。政府管掌健康保険においては、保険料率が実質的に0.7%ポイント引き上げられる。また、医療費の自己負担割合が引き上げられる。若年層はすべて3割負担となるほか、老人医療においても1割負担の徹底、高所得者の2割負担化が実施される。これらの医療制度の変更により、医療費の自己負担が4,800億円、保険料負担が1兆300億円増加する。また、介護保険サービスの増加により、介護費の自己負担が500億円、家計の保険料負担が1,500億円増加する。

○10月に雇用保険料率が1.2%から1.4%に引き上げられたが、2003年度中の1.6%への再引き上げが検討されている。また、景気への配慮から凍結されていた公的年金支給額の物価スライドが、2003年度には実施される見込みである。

○医療および介護費の自己負担増加により個人消費は5,300億円押し上げられるが、各保険料の増加や年金支給額の減少、医療および介護費の増加によってその他の財・サービスへの消費が1兆7300億円減少する。個人消費は全体として1兆2,000億円減少する。医療および介護費の拡大による保険給付額の増加は、医療費自己負担の増加によって抑制されるものの1兆4,200億円となり、政府最終消費支出を増加させる。個人消費が減少するものの、政府最終消費支出が増加するため、GDPへの影響は2,200億円の増加とほぼニュートラルになる。また、事業主負担のある保険料の引き上げにより、企業の負担が6,550億円増加する。

○社会保障給付の増大は医療・介護サービスに対する需要の拡大としてGDPの押し上げ要因とみなすこともできるが、負担増となる経済主体の消費・投資行動を抑制する面もある。特定のグループの負担が過大にならないようにバランスを調整することも必要となってくる。

[PDF] PDFファイルで 図表入り全文を提供しています。(109KB)

[Back]