2002年11月13日

イラク攻撃の米国経済への影響


○米国によるイラク攻撃が現実味を帯びてきており、戦争によって経済が被る影響が懸念されている。米議会は10月にイラク攻撃容認決議を可決し、攻撃に向けた国内の手続きは完了した。また11月8日には、国連安保理がイラクに対して大量破壊兵器査察を要求する決議を採択した。この決議では、イラクが決議違反を犯した場合、「重大な結果」を招くとの警告がなされている。

○攻撃が開始された場合の経済への影響を考えるに当っては、湾岸戦争時の経済の動きが参考になると思われる。湾岸戦争時、金融市場は、イラクのクウェート侵攻(90年8月2日)によってトリプル安(株安・債券安・ドル安)となった。その後、長期金利は景気の悪化を受けて低下(債券高)に転じ、戦争終盤まで低下が続いた。株価は空爆開始(91年1月17日)を契機に上昇に転じ、為替も戦争終結の見通しが立った91年2月中旬からはドル高に転じた。また、原油価格はクウェート侵攻後、1バレルあたり39ドル台まで上昇し、物価上昇をもたらした。個人消費は、物価の上昇やマインド悪化により、90年10-12月期から2四半期連続してマイナスとなり、GDPも90年7-9月期から3四半期連続のマイナス成長に陥った。戦争終了後は、株価・マインドの回復から個人消費も持ち直し、景気は回復に転じた。

○今回、イラク攻撃が行なわれた場合、開戦初期は先行き不透明感の強まりから、株価は下落するとみられる。また、ドル資産に対する売り圧力が強まり、ドル安が進行する可能性が高い。長期金利については、開戦直後の一時的な上昇は考えられるが、その後景気悪化により低下するとみられる。戦局が進行し、終結のめどが立った時点から、株価、長期金利は上昇に転じ、ドル安にも歯止めがかかると予想される。一方、原油価格は、すでにイラク攻撃を織り込んで上昇しており、開戦後に急騰する可能性は低い。個人消費については、開戦によるマインド悪化から減少が予想され、実質GDP成長率も個人消費の落ち込みによってマイナスとなるとみられる。ただし、戦争が短期で終結すれば、株価・マインドの回復から消費が持ち直して、景気は回復局面に入ると予想される。

○戦争が長期に及んだ場合、株安や消費者マインドの悪化が長期化することに加えて、戦費増大による経済への影響が強まると予想される。戦費の増大は政府支出の増加として成長率を押し上げるため、短期終結の場合と比べて必ずしも成長率が低くなるとは限らないが、その反面、財政赤字拡大から長期金利が上昇する可能性もある。したがって戦争が長期化した場合、株価・消費者マインドの低迷に加えて、長期金利上昇が民間需要を抑制し、景況感は悪い状態が長引くと予想される。

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