2003年12月11日
○2003年春以降、人民元切り上げの議論が続いている。貿易摩擦への対応が必要なだけでなく、外貨管理、資本移動規制の継続は、中国にとっても合理的な選択ではないからである。切り上げは、(1)10〜40%の切り上げ、(2)5〜10%の変動幅拡大、(3)完全な変動相場制へ移行の観測があり、短期では(2)、中長期では(3)が有力である。
○人民元は長期的に「柔軟な為替制度」に向かうことが、国際的に既定路線となったが、条件がまだ整っていない。政府は金融システムの実情を考慮して、改革の順序を重視しており、為替制度の変更は現状では考えられない。
○今後10年間を展望すると、第1に、一人当たりGDPは依然として低く、そのため、為替変動は潜在的に大きい。第2に、経常黒字基調が強まることは考えにくい。経済大国化により、変動相場制移行への圧力は強まるが、相場の方向感が人民元高とは限らない。第3に、直接投資は人民元上昇圧力として働き続ける可能性が高い。
○第4に、国際的な資金移動の規模はごくわずかである。受け皿となる国内の株式・債券市場は十分な規模がない。資本取引規制の緩和が試みられつつあるが、本格的な成長には時間がかかる状況である。第5に、為替決定メカニズムを市場に委ねる前提として、金融政策の有効性を検討すると、現状は不全な状態であり、しかも不良債権問題の存在が先行きを不透明なものにしている。
○こうしたことから、2010年頃を見通すと、直接投資が為替上昇圧力となるが、(1)経済規模、(2)経常収支、(3)国内債券・株式市場、(4)金融政策の有効性は必ずしも上昇圧力とならない。為替相場制度を見直すとしても、変動相場制への移行は性急である。資本移動規制を一部続けながら、変動幅拡大などで対処するのが順当であろう。その際の為替水準は、直接投資が流入超過な分、やや人民元高になると予想される。
○中国が変動相場制または変動幅の拡大を受け入れるには、為替上昇の輸出及び関連需要へのインパクトを内需が十分カバーすることが条件になるのではなかろうか。しかし、基軸通貨国でない中国が経常収支赤字に陥り、それが続く可能性があり、それは世界経済にとって大きな不安定要因になる。経常収支が赤字に陥っても、中長期的に資金が中国に還流し、通貨価値が維持される状況が必要である。安定の仕組みを国際的な枠組みのなかで検討し、育む試みが出てくるのではなかろうか。
PDFファイルで
図表入り全文を提供しています。(161KB)