次世代経営幹部の育成は最重要課題
実践を通じて成長を促し、社内変革を同時に実現

企業が永続するためには、次世代の経営幹部育成と社内変革が不可欠だ。経営幹部の育成には、実践を通じた意識改革が必要で、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)では「ジュニアボード」という実践的な手法を用いる。北陸の優良企業であるスギノマシンに採用された事例を紹介する。

小松 創一郎
小松 創一郎
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
経営コンサルティング部(大阪)
チーフコンサルタント
杉野氏
杉野 岳
スギノマシン 常務執行役員
経営企画本部長 兼 新規開発部長

スギノマシンの課題は、経営的視点で意思決定をできる幹部が少ない、ということだった。 「専門性が高く、言われた仕事は実直にこなすが、近視眼的な傾向が強く、経営トップの指示を待つ組織風土でした。“自分で考えられる幹部”を育てなければ未来はない、という危機感がありました」と、同社の杉野岳常務執行役員は振り返る。

経営幹部の育成は経営承継の最重要課題であるが、単純に研修をすれば良いというものではない。相談を受けたMURCのチーフコンサルタント・小松創一郎が提案したのは、“ジュニアボード”という実践的な手法だった。“疑似役員会”とも言われ、実際の経営課題を解決するプロセスを通じて、経営的視点(全社最適解、当事者意識等)で考えることができるよう、意識改革を行っていく手法である。
ジュニアボードでは、コンサルタントは参加メンバーに答えを示さず、課題解決の仕方のみを必要に応じてレクチャーし、メンバーが自力で答えにたどり着くように導いていく。


ジュニアボードの課題は模擬的なものではなく、
本物の経営課題だったことに意味があった

事実に基づいて課題の真因を追究する

スギノマシンの場合、30 代から40 代の若手中堅幹部らを中心に部門横断的に十数人のメンバーを集め、三つのチームを作った。2週間に1度、全国から本社にメンバーが集い、全社的な経営課題に取り組む。各チームが小松のサポートの下、自ら課題の真因を追究して抜本的な解決策を導き出す。

最終的なアウトプットは経営トップへの提言である。
「ジュニアボードの良い点は、課題が模擬的なものではなく、本物の経営課題であることです。提案内容が認められれば実際の経営に反映されるため、モチベーションも緊張感も高まります」と杉野常務執行役員。

 検討する上で重視するのは、「事実を押さえる」「真の原因を突き止める」「合理的な立論を行う」「分かりやすく示す」ことと小松は言う。「メンバーへの経営情報の開示」と「検討途中でのプロジェクト外からの横やり防止」も重要だ。

スタート当初は戸惑いもあったが、2カ月後に突然メンバーのスイッチが入った。事実の把握と分析から解決策のアイデアを導き出す面白さと、経営に参画する意識が浸透し、メンバーのやる気に火が付いたのだ。

3年にわたり3回行われたジュニアボードの第1回目の課題は“海外戦略の見直し”だった。だが、チームが課題の真因を探った結果、導いた答えは“全社的な組織改編”であった。国内外の垣根を取り払い、顧客ベースで事業部を集約した方が海外戦略を立てやすいからだ。この提案は経営会議で承認され、後続プロジェクトを経て、6事業部から2事業本部体制にする大改革が行われた。「最も大胆な提案が通ったことに、私自身が驚きました」と杉野常務執行役員は回想する。まさにジュニアボードの提案が会社を動かしたのだ。

次の第2回、第3回の提案も経営に採用された。結果として、ジュニアボードの成果は、メンバーの成長はもちろん、経営陣の意識改革にまで及んだ。

メンバーの頑張りと経営陣の覚悟と信頼関係が成功の秘訣

同社は昨年の創業80周年に、コーポレートアイデンティティー(CI)を見直すプロジェクトを発足。そこにもジュニアボードの経験が生かされた。また部門の垣根を越えて、参画メンバー同士の強いネットワークが構築され、”事実に基づいて考える”などの共通言語も定着した。さらにこれら人材を生かすための異動も行われるなど、一過性の取組みに終わらない動きが続いている。

「ジュニアボードが成功したのは、メンバーの想定以上の頑張りと経営陣の覚悟があったから。通常業務の中で宿題に追われ、厳しい指導があっても継続できたのは、MURCのコンサルタントとわれわれの強い信頼関係があったからです。今は経営幹部の成長と、企業として永続するための変化が社内で起きていることを実感しています」と杉野常務執行役員は手応えを語る。

【COLUMN】スギノマシン 六つの「超技術」で目指すグローカルニッチリーダー

富山県魚津市に本社を置くスギノマシンの創業は1936年。国産初の水圧式チューブクリーナーの開発が原点で、その技術から「切る」「削る」「洗う」「磨く」「砕く」「解す」という六つの”超技術”が誕生した。主力商品は、超高圧水を利用して対象物を切断するウォータージェットカッタなど。BtoBのメーカーとして、自動車、エネルギー、航空機、食品、化粧品など市場は幅広い。海外展開にも積極的で、現在売上高の約5割を海外が占める。創業の精神は「自ら考え、自ら造り、自ら販売・サービスする」。昨年創業80周年を迎えて企業理念を構築。ブランドロゴも一新し、富山県をベースに世界で戦う「グローカルニッチリーダー」をビジョンとして明確化した。


スギノマシンの商品は、自動車、航空機、医薬品、化粧品、土木・建築、食品、
エネルギー、機械、電子機器など、あらゆる業界のさまざまな場面で活躍

【COLUMN】創業の精神を承継しさらなる成長を実現する ウェイ・マネジメントの支援を行う

寺島 大介
寺島 大介
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
コーポレートアドバイザリー部(東京)
チーフコンサルタント

世代を超えて成長を続ける強い企業には、必ず「共通の価値観=WAY(ウェイ)」がある。寺島大介チーフコンサルタントは、「創業者の思いや会社のDNAを明文化して浸透させることを、ウェイ・マネジメントと呼びます。企業として存続・成長するためにはウェイの策定が必須で、さらにそのウェイを行動として体現できるよう、会社の制度や仕組み、業務のプロセスに取り込んで浸透させることが必要になります」と説明する。

 ある専門商社のケース。老舗企業だが創業当初の挑戦する意識が薄くなり、成長の原動力となるマインドを再構築する必要があった。そこでMURCでは社長の長男・次男をリーダーに、中堅・若手社員を中心にプロジェクトを組成。約1年かけて顧客アンケートやワークショップを実施してウェイを策定した。策定後は、浸透のための委員会を設置、情報共有や新規事業アイデアの検討などを通して、ウェイを体現する風土が根付きつつあるという。「自社の強みや顧客が期待することを客観的に把握し、承継すべきDNAを明らかにすることが重要です。それらをウェイとして明文化し、社内に浸透させ、業務や人事評価等の企業活動にも生かし、成果につなげるという一連の流れをワンストップで支援する、それがMURCの特徴でもあります」

お問い合わせ

本件に関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
「経営承継」コンサルティング 総合窓口
E-mail:keiei-syokei@murc.jp

※週刊ダイヤモンド :View Point 2017 2017年11月11日号より転載

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