フィリピン経済の今後の成長軸は?
全文紹介

2007/08/28


~ 新たなチャンスをもたらす東アジアでの経済統合加速 ~


○今年はアジア通貨危機から10年目の節目にあたる。通貨危機で打撃を受けたフィリピン経済はすでに立ち直り足元の景気も堅調である。フィリピンの2006年の経済成長率は周辺国にほぼ並び、1980-90年代に見られたような周辺国との経済成長率格差は解消した。


○しかし、アジア通貨危機以降、日本企業のフィリピンへの関心度は、タイやベトナムに比べてかなり低くなっている。フィリピンに対する日本企業の評価が後退したのは、大統領選挙をめぐる政治情勢混乱、テロやクーデターによる社会情勢動揺などの要因が影響したためと見られる。ASEAN域内でベトナムなどの新興勢力が台頭する中、フィリピン経済の今後の成長軸が何であるかがやや見えにくくなっている。


○現在、フィリピンの景気を押上げる重要なファクターと見られているのが、海外出稼ぎ労働者(OFW)からの送金である。OFW送金は、海外での景気拡大を背景に2002年以降増加を続けており、2006年には127億ドルと過去最高を記録した。ただ、OFW送金がフィリピン経済の持続的な発展につながるかは疑問である。その理由は、OFW送金の多くは、起業・投資ではなく消費に使われてしまう傾向が見られるからである。


○フィリピン経済の持続的成長のためには、やはり、生産・雇用・所得の拡大につながる直接投資の流入拡大が不可欠であろう。今、東アジアではFTAを梃子とした広域的な生産ネットワークが形成されており、「中国一極集中」ではなく、国境を越えた垂直分業、水平分業がダイナミックに展開されている。こうした中で、フィリピンとしては、今後、中国や近隣ASEAN諸国との協業関係のなかに成長軸を求めるべきであろう。フィリピンは、高等教育機関を卒業するエンジニアの供給が近隣ASEAN諸国に比べて豊富であり、こうしたメリットを活かせば今後も成長を持続する可能性はあると考えられる。


○フィリピン経済の成長持続のためにもうひとつ重要なポイントは、政治の不安定とガバナンスの弱さを改善することである。これを実現しなければ外国からの投資拡大は期待できない。その意味では、フィリピン経済の今後の持続的発展のカギを握るポイントは、実体経済部門よりも、むしろ国内政治にあると言えそうだ。


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