南アフリカ経済の現状と今後の展望 ~ リーマン・ショック後の動向と中長期展望 ~
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2009/06/09


○ここ数年の南アフリカ経済は、ポスト・アパルトヘイト時代で最も好調な局面を享受し、経済成長率(実質GDP年間成長率)は2004年以降4年連続で5%前後の高い伸びを示した。景気拡大の主な牽引役は個人消費であり、これは、雇用・所得環境改善、ランド高、株価上昇等による資産効果などの要因に後押しされたものだった。また、2003年から2006年まで低金利と融資拡大が続き、こうした金融緩和も個人消費拡大を支えた。


○南アフリカの2004年以降の好景気は、投資(固定資本形成)の拡大にも支えられていた。2003年以降の低金利を背景に、民間企業設備投資が盛り上がり、また、2010年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会開催を控え、競技施設や各種インフラなどの建設工事がさかんに行われた。このため、投資率は、2004年頃から急速に上昇した。


○しかし、米国金融危機発生後、南アフリカの景気は悪化しており、前期比経済成長率は、2008年7-9月期に大きく鈍化、同10-12月期にはマイナス転落、2009年1-3月期はマイナス幅がさらに拡大した。特に落ち込みが顕著な部門は製造業であり、これは、米国向け輸出不振等から、2008年夏以降、自動車産業が操業度を大幅に落とした影響が大きいと見られる。また、鉱物資源価格下落で採算の悪化した鉱業も、成長率がマイナスに陥った。


○近年、南アフリカ経済にとって悩みの種となっているのが、電力需給逼迫問題である。2008年初頭には電力不足が深刻化し、企業に対して電力使用制限が課され、自動車産業や鉱山業などの生産活動に影響が出た。電力不足の主因は、ポスト・アパルトヘイト時代になって電力部門の設備投資やメインテナンスの水準が低下したことにある。


○南アフリカ経済の不安要因のひとつとされるのが経常収支の大幅な赤字である。2008年の経常赤字対GDP比率は、IMF緊急支援を受けたハンガリーやウクライナと同じレベルまで拡大した。しかし、金融セクターが健全で金融当局のリスク管理能力も高い南アフリカは、ハンガリーやウクライナのような危機には陥らなかった。


○近年、南アフリカ政府の黒人優遇策などを背景に、「ブラックダイヤモンド」と呼ばれる黒人中間層が拡大しており、こうした黒人層の所得水準向上が、今後の南アフリカ経済の成長を支える牽引車になると期待される。南アフリカのビジネス環境の大きな問題は治安の悪さであるが、黒人の生活水準の引き上げは、この問題の本質的な解決にも資するものと言える。南アフリカは、中長期的視点から見て経済成長のポテンシャルに富んでいると考えられ、今後も、アフリカで最も有力な新興経済国として注目に値する。


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