ベネズエラ経済の現状と今後の課題 ~ 21世紀型社会主義と巨大な原油資源のゆくえ ~
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2009/12/02


○ベネズエラは、原油輸出で得た富により、1950年代に南米トップクラスの高所得国となった。しかし、1980年代には政府の過剰投資と原油価格下落によって対外債務危機に陥り、経済情勢は不安定化した。以後、ベネズエラ経済は、1980年から現在に至るまで、年次ベースの経済成長率が10回もマイナスに陥っている。また、1999年に発足した反米左翼のチャベス政権が社会主義指向を強め、国内経済情勢は混迷の様相を呈している。


○チャベス大統領は、「中南米を米国の影響力と新自由主義から解放する」ことを大目標に、米国と対立関係にあるキューバ、イラン、ロシアなどとの関係を強化している。また、経済政策面では、「21世紀型社会主義」を標榜し、経済に対する政府の介入を強化し、価格統制、解雇禁止、貧困層向け社会支出拡大、民間企業の国有化といった政策を推進している。さらに、自国通貨を過大評価した固定相場制のもとで外国為替統制を強めている。


○チャベス政権のこうした政策は、ベネズエラ経済に負の影響を及ぼしつつある。固定相場のもとでの為替統制は、自国通貨が大幅安となる非公式レートの利用を拡大させ、事実上の二重為替制度を招いてしまった。価格統制は、国内生産者の供給意欲を失わせ、結局、非公式レートによる輸入を増加させ、物価を急上昇させた。解雇禁止は、労働者の勤労モラルを低下させ、生産活動を停滞させた。また、貧困層向け支出拡大は、石油輸出で得た国富を減少させただけで貧困層の所得底上げにはつながっていない。さらに、民間企業の国有化は、外資企業のベネズエラに対するセンチメントを悪化させてしまった。


○チャベス政権の経済運営の最大の問題点は、「平等」を重視するあまり経済政策が所得再分配に偏重してしまい、他方で、国民所得全体を底上げする「成長」戦略を全く描けていないことである。中間層・富裕層はこうしたチャベス政権の政策に不満を抱いているものの、国民の大半を占める貧困層は、貧困層向けばら撒き政策を続けるチャベス大統領を支持している。このため、大統領選挙で反チャベス派が勝つ見込みは薄いと見られる。


○他方、ベネズエラは、オリノコ川流域の重質油の探査・開発を進めており、近い将来、サウジアラビアに匹敵する世界最大級の原油埋蔵国と認定される見込みである。このため、今後の経済成長ポテンシャルは大きい。ベネズエラ経済にとって長期的に見て望ましいシナリオとは、巨大な原油資源を国民の所得向上や資本ストック充実へと結びつけ、堅実で効率的な経済運営によって持続的な成長軌道に乗ることであろう。しかし、チャベス政権のもとでは、それが実現する可能性はほとんどないと言わざるを得ないだろう。


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