財政問題が為替相場に与える影響について ~物価、金利、国債、為替についての考察~
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2010/09/30


○リーマンショック後に各国は大型の財政支出を行った。その財政支出が一因となって、欧州諸国の財政問題が懸念され、為替市場では大幅にユーロ安が進んだ。現在、財政赤字は先進各国に共通する問題である。財政収支や政府債務残高と為替相場との直接的な関係は明確なものではないが、市場において、国債のリファイナンスに懸念が生じると、長期金利が上昇して財政赤字が拡大する悪循環に陥る可能性がある。


○為替相場は、基本的に各国通貨の収益率を比較して決まっていると考えられる。中長期的には貿易を通じた収益機会が裁定され、為替相場と物価との間には密接な関係があると考えられる。また、短期的な為替相場の変動については、近年は金利との連動性が高い。金利が変動する理由が景気見通しの変化によるところが大きく、各通貨についての期待収益率の動きに近いからだと考えられる。


○財政収支の過度な悪化が為替相場に影響するルートとして、「財政悪化や国債増発が物価見通しに影響する」、「財政悪化が経済全体の不確実性に影響する」などを想定した。もっとも、今のところ財政収支の悪化は日米欧の物価見通しに影響していないとみられる。一方、財政収支が悪化している欧州諸国の一部では、国債利回りが押し上げられている傾向がうかがわれる。


○国債の利回りが押し上げられ、スワップ・スプレッド(=スワップ金利-国債利回り)が拡大している国では、株価の変動性(ボラティリティ)が増大するなど、マクロ経済の不確実性が高まっているものと推察される。すでに財政収支が過度に悪化していてスワップ・スプレッドの悪化が目立つ国については、財政の健全化を進めることで、国債の信頼度が回復し、国民経済へも好影響があるので、為替市場では自国通貨を上昇させる効果があると考えられる。


○日本の場合は、財政赤字や政府債残高が大きくても、スワップ・スプレッドの拡大がそれほど目立たず、国債のリファイナンスに対する懸念は小さい。しかし、政府が消費税増税など歳入増加策を講じても、それが歳出増加に充てられて財政収支が改善しないような場合には、日本の財政への信頼感が揺らぐ可能性が否定できない。財政再建策を練るからには、市場から懸念されないような入念なものにする必要がある。


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