ベトナム経済の現状と今後の展望 ~ 経常赤字拡大とドン安進行を解消できるか? ~
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2011/03/11


○ベトナムは、共産党一党独裁下で市場経済化を進めるという「中国型」政治経済体制のもと、東アジアで中国に次ぐ高い経済成長率を維持しており、さながら「東南アジアのミニ中国」といった様相を示している。


○ベトナム経済は、リーマンショックの激震を乗り切り、タイやマレーシアのような大幅な景気後退を回避した。ベトナムがアジア通貨危機やリーマンショックなどから国内経済を守れたのは、基本的には、中国と同様に金融市場を対外開放していなかったためであると言える。しかし、堅調な動きを見せるベトナム経済も、近年、経常赤字の増加、ドン安の急加速、といった不均衡の拡大に直面している。


○経常赤字増加の主因は、貿易赤字拡大である。ベトナムは産業基盤が脆弱であり、一次産品や軽工業品など低付加価値品を輸出し、付加価値の高い中間財や資本財は輸入に依存している。つまり、経済成長が貿易赤字を誘発するような産業構造であると言える。また、貯蓄率が投資率を大幅に下回っていることも、経常赤字拡大につながっている。


○ベトナム通貨ドンの対ドル為替相場は、1986年のドイモイ政策開始以降、ほぼ一貫して下落を続けてきた。最近では、金価格高騰を背景に、ベトナム国民の間で、ドンを売って得たドルで金を買う動きが強まり、それがドン安を加速させた。また、経常赤字の慢性化によるドン先安感の高まりも、ドン下落につながっている。


○日本企業の投資先としてのベトナムへの関心は非常に高い。しかし、最近、ハノイやホーチミン周辺を中心に労働市場が逼迫しており、労働集約型の大規模量産工場の進出は難しくなりつつある。また、運輸・エネルギー・裾野産業といった投資インフラも、依然として、中国やタイに比べて改善すべき課題が多い。


○ベトナムは、今後、貯蓄の向上と裾野産業の充実による経常赤字の是正や、一方的なドン安の是正といった構造的問題の解決に向けて、長期的視点で取り組む必要がある。ただ、中国とASEANのFTA形成により関税障壁がなくなりつつあるなかで、ベトナムでの裾野産業育成の先行きには不透明感も漂う。経常赤字とドン安を短期間で是正するのは難しいことから、ベトナム経済は、当面、成長は続けるものの、経常赤字やドン安という不均衡も解消できないというシナリオが濃厚である。


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