フィリピン経済の現状と今後の展望 ~ ASEANの中で再浮上できるのか? ~
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2011/03/15


○フィリピンは、マルコス政権時代の1980年代に政治経済情勢が混乱し、1990年代前半にかけて周辺諸国との経済成長率格差が拡大していた。しかし、最近のフィリピンのマクロ経済は堅調であり、経済成長率は周辺諸国と比較しても遜色はない。2010年の経済成長率は、7.3%と、35年ぶりの高い伸びとなった。


○フィリピン経済を支えているのが、海外在住フィリピン人労働者(OFW)からの送金である。OFW送金によって国内消費が堅調に拡大し、それが景気を押上げている。また、国際収支面でもOFW送金に大きく依存しており、慢性化した貿易赤字を多額のOFW送金でカバーし、経常黒字を維持する構造になっている。OFW送金は、2010年には、過去最高の180億ドルとなり、名目GDPの1割にも相当する巨額に達している。今や、OFW送金は、フィリピン経済にとっての命綱となりつつある。


○フィリピンの物価、金利、為替は、タイやマレーシアなど近隣諸国と比較しても遜色ないほど安定的に推移している。株価も足元で過去最高水準となっているが、これは、フィリピン固有の要因によるものと言うよりも、むしろ、世界的な新興国投資ブームによって押上げられた可能性が高いと見られる。


○フィリピンのマクロ経済における懸念要因のひとつが、財政赤字とそれに起因する外債発行残高の多さである。財政赤字を解消できなければ、公共投資が制約され、ビジネス環境整備に不可欠であるインフラ投資などにも大きな支障が出てくることが懸念される。また、外債依存度が高いフィリピンにとって、ペソ安や、国際金融市場の混乱等による起債環境悪化は、大きなリスクファクターである。


○フィリピン経済は、成長率では、周辺諸国と比べて遜色ない堅調さを示しているが、他方で、直接投資流入額や輸出の面では、タイやマレーシアに大きく水を開けられ、ベトナムにも追い越されるなど、存在感が低下傾向にある。直接投資流入不足による雇用低迷が、OFWを増やしている側面もあることは否めない。豊富な若年人口と国民の高い英語運用能力という強みがありながら、外国からの直接投資が周辺国より少ないのは、フィリピンの社会・治安情勢に対する投資家の不信感が主因と考えられる。アキノ政権のもとで、政治経済情勢、特に治安情勢の安定を長期間持続することが、投資家の信認回復へのカギとなろう。


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